時雨

□19.
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「奈央、俺今日から学校行ってくるわ。」



「そう。どこ行くの?」



「俺は青学。前は東京住んでたし今から転校すんのも、な。」




じゃなくて、どうして立海に来ないのか、って聞きたい。


だってその方があいつらと接触するのも簡単そうだしね。



きっと勇太も分かってるんだと思う。


だけどあえて青学に行くんだ。






「神奈川から遠いんじゃない?」



「遠いと思う。けど…これが約束だから。」



「約束?」



「父さんとの約束。3つ守る代わりに俺は同居を許可したんだ。」



「そんなの私…聞いてなっ「奈央がどう思おうと変わらないんだよ。」」




私は双子なのに、



勇太のことを知らなさすぎる。



身体を巡る血だけが私達を繋いでる。



「今日から一家4人だな。久しぶりの。」



「うん。」



「…奈央」



「…うん」





「…ごめん」





ねぇ、それはどういう意味で謝ってるの?


迷惑かけてごめん?

私を陥れてごめん?

お母さんと暮らすことに対してごめん?


いっぱいありすぎてわかんないよ。




「もう一度だけ言う。何も、覚えていないのか?」




「……うん」




「なら…いい。だったら、俺に出来ることをするまでだ。」



「勇太ぁ…っ私…どうなるの…?」




涙が頬を伝う。

今まで決して出なかった涙が。


苦しくて悔しくて何も出来ない自分が嫌で。



どうして私なの?



こればかり考える。



弟も両親も親友もテニス部も…


誰も信用できない中で一人ぼっち。


こんなに周りが怖いことなんか他にない。




「奈央、これだけは覚えておいてほしい。」



「……ん、」




「少なくとも俺は奈央に危害は加えない。それだけは信じてほしい。けど…」



「けど…?」




「幸村さんがどう動くかまだ分からないんだ。だから、気をつけて。」




「敵は幸村だけなの?」



「…幸村さんは敵じゃない。味方でもないけど。」



「それってどういう…」



「あ、そうだ。リョーマが会いたがってたぜ。さすがに覚えてんだろ?」



リョーマ…









「…うん」





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