時雨

□01.
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中学三年生の時に私は言った。




ー人生ってどういうものが人生なのかなー


…と。




このときは私は色々なことに悩んでいる時期だった。



友達のこと、家族のこと、そして…





恋のこと。







私はその悩みの答えを誰よりも…


あるいは自分が求めている以上に




早く知りたかったのかもしれない。





そんなとき、アイツは笑いながら言った。






『人生ってそのものが儚い夢や幻のようなもの、だと俺は考えている。

 




 だから、その人生の中で生かされている俺達って








 
 すごく儚い生き物なのかもしれないね』












それは私の欲しい答えではなかった。








そもそも質問の答えが違う。










だけど、私はむかついた。







そんな答えをサラっと平然そうに言ったアイツに少し苛立ちも覚えた。







でもそれ以上に質問の答えは違ったけど、





アイツの言っていることは間違っていないと







私は認めてしまっていた。









でも…




それなら…






『だったら…っ







 その儚い生き物の中にどうして私が選ばれたの…っ









 どうして私は人生に生かされてるの…』










ヒュウッ







冷たい風が私たちの中を通りぬけていった。











アイツは静かに笑ってる。










きっと私のことを馬鹿にしてるんだ。











微かに口を開いた。










『…え?』








今・・・なんて?











『フフッ…もう、行こうか』




















雨が降り始めた。






















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