キセキU

□30.
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「全国二連覇ーーー…」


「ああ。俺たちで成し遂げたんだ」




最後は、ブン太のボレーだった。
またいいとこ取りしやがって。
ーーーま、いいけど。
前衛はチャンスをしっかり決めることが重要なポジションだしな。

そういうとこで言ったらブン太は本当に天才なのかもしれない。



「っしゃぁぁぁぁあっ!」



ブン太の大きな声に、立海のベンチからも沢山の声が上がった。
客席もほとんど総立ち。



『整列お願いします』



審判の声がして、後ろを振り返ると仲間がこっちに向かって来ていた。



「ありがとうね二人とも。信じてはいたけど全国二連覇達成することが出来たよ」


「ああ。」


「来年は俺で三連覇決めるっスからね!」


「たわけ赤也。」


「えぇーっ副部長ひどいっス!」


「良かったですね。」


「柳生。お前さん負けたじゃろ」


「次は勝ちますよ」


「おうおう怖いのう紳士は」


「整列だ。喋るのは後にしろ」


柳の一言で俺たちはサービスラインに並んでからまた一歩踏み出してネット際まで進んだ。


「幸村」


「なんだい跡部」


「俺様との試合になっていたら勝敗は分からなかったぞ」


「そんなことはないよ。勝つのは俺で俺たちだからね。」


「ハッ、言うじゃねぇの」


「次また再戦するとしたら秋か」


「うん。それまでに強くなっておいで」


「相変わらずだな。ーーーま、これだけは言っておく。次勝つのは俺たち氷帝だ」



「ふふ、下剋上だね」


一番端にいた日吉が肩を震わせたのが一瞬見えた気がした。



「ーーーーアイツのこと頼むぜ」


「アイツ…あぁ、任せて。」



跡部と幸村の言うアイツって
もしかして細谷か?


二人の顔が和らいだ気がした。


『男子決勝は、3-1で立海大付属高校の勝利です。気をつけ礼』




「「「「ありがとうございました」」」」




大きか拍手が聞こえる。
優勝した俺らに向けられたもの、
あと一歩だったと氷帝に向けられたもの、
すべての選手に向けられたもの


きっと沢山の意味が込められている。



終わった。



けど、ここからが前人未到の全国三連覇への始まりだ。




『表彰式は、午後からの女子の決勝が終わってから行うから夕方になると思っていてほしい』



審判さんが俺たちに向けて言った。

まぁそれも毎年だしな。
いつもはこの後はストレッチした後自由時間なんだけど。


「分かりました。皆、行くよ」


幸村の声に反応してベンチへと戻っていく俺たち。


「よぉし!じゃ、ジャッカル。俺美羽に会ってくるからこの後はよろしくな〜」


「はぁお前…何を言ってるんだ」


「やっべ興奮してきた」


「お前ギリギリだぞ」


「さて。3時間くらい時間あるかな。お昼食べてからの予定なんだけどー」


荷物を片付けながら話す幸村。
でも荷物が少ないからか携帯を見ている。




「…うん、ふーん。よし、決めた。赤也と丸井」



「うぇっ?」


ルンルン気分で浮かれてやがるブン太とちょー笑顔の赤也を幸村が呼んだ。



「君たちは一旦神奈川に戻って先生達に報告してきてくれる?あと買い物ね。」



「ええっぶちょーっそりゃないッスよ!何で帰らなきゃいけないんすかぁ!」


「そ!そうだぜ幸村君!俺だってやりたいことあるし」



「あれ。今日すき焼きにしようと思ってたんだけどなぁ。君たちが材料全部決めていいと思ったんだけどなぁ。もちろんお金は全額負担なんだけ「「やります」」分かればいいよ」



なるほど。
つられてやがるな二人とも。



「じゃあストレッチ終わったら各自動いてね」



「「「「イェッサー」」」」



「よし赤也!早く終わらせるから手伝え!!」

「分かってるッスよ!」



すき焼きにつられた二人は目を輝かせながらストレッチをしている。


単純だな。でもこのレギュラーメンバーの中では数少ない単純なやつら。よく言えば素直な奴らだ。



「ジャッカル。手伝おうか」


「お、幸村。ありがとな」


「ふふ、二連覇決めてくれたんだから。」


「話したいのはそういうことじゃねぇだろ?」



俺の背中をぐいぐい押す手がぴたりと止まった。


図星か。



「はぁ、今回は俺の負けだよ。あの子達の絆は思ったよりも深かったみたいだね」



表情は見えない。
だけど多分幸村は安堵していると思う。




「ああ。まさかこんな観客がいる中で見つけるとはな」


「色々上手くいきすぎてる気もするけどね」


そう言って幸村は苦笑しているようだ。

それって、


「白石のことか?」


「ふふ、やってくれるじゃないか。でももしアレを見て丸井が試合を放棄するようだったら俺は無理にでも会わさせないつもりだった」


幸村…。


「じゃああれでブン太は正解だったんだな」


「当たり前じゃない。まぁ本当はどちらにせよ会わすつもりはなかったけどね。」


「幸村」


「ーーーーけど、ここまで来たらいいかなって思ってる。」



「それって…」


思わず振り返ると、幸村はニコリと微笑んで立ち上がった。








「ご褒美をあげないとね。」








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