キセキU

□28.
3ページ/8ページ





『只今からAコートにて男子決勝、立海大付属高校対氷帝学園の試合を行います』



アナウンスが流れているのが遠くから聞こえる。


何故遠くからなのか、
それはーーーー





「ほんっっっまアホや謙也さん。イグアナなんぞに餌やっとる暇あるからこうなるんですわ」



「はぁ光!お前やって美羽とデレデレしながら話しとったやんか!」


「美羽さんも悪いみたいに言わんといてくださいよ!」


「俺も部屋でジブリ観てたばい。同罪やけん怒らん怒らん」


「おっ前もかぁ千歳ぇ!」


「とか言いながらユウ君だってあたしの部屋でお笑い観てたやないのぅ」


「ええ加減にせぇ皆。誰一人悪いとかないねん。ただ今は皆の持ってる全力の力で走ればええ話や」



「むん、さすが白石はん」


「俺は最初から早よ行こう言うてたんやけどな…」




そう、あたし達四天は会場に遅れている。

今回はレギュラーだけで決勝を観に行くことになって部員や応援に来てくれた子達は大阪に帰って行った。



そしてあたしも巻き添いにされて走っている。



「っ、はぁっ…」


「美羽、限界来たら言うんやで。おぶったるからな」


「そ、それは恥ずかしいかも…」



蔵に真顔で言われたけどそれはだいぶ恥ずかしい。
東京だし、人前だし…。



「あー、やっと着いたわぁ」


「Aコートってどこや」


「あっちですわ。2回戦あそこでやったやないですか」


「財前いつかどつく」



皆は毎日走り込みとかしてるから全然息切れしてないみたい。

あたしは太腿に手をつけて、ハァハァと息を整える。
それに暑いから汗も流れてくる。
やだな、この感じ
ジメジメする。



「はい、美羽」


下を向いているからいきなり現れたのは、緑茶だった。



「ありがと蔵」


「美羽はスポーツドリンクよりもこっちの方が好きなんやろ?」


「うん、好き。こんな事も知られてたのかぁ」


「美羽の事は何でも知っとるで」


「うん、そーかもね」



まるでクラスで話してるみたい。

夏休みも後半だし、もう終わるなぁ。
2学期ってすごく長く感じるから嫌い。
憂鬱だなぁ。


「新学期、始まる前の日に花火大会あるやろ」



「うん、あるね」



貰った緑茶を飲みながら答える。
あーー、美味しい。
素敵です緑茶様!!!!



「一緒に行かへん?」


「んっ…ぷはっ、」


「ふはっ、色気ないな」


「ちょっと!うん、いいよ。いこ」


「約束やでー」


「うん。約束ね」


小指を出してくる蔵
こういうとこは子供みたい。
こういうちょっとしたとこのギャップってやつか。


破ることなんてないのに。
蔵との約束。



「「ゆーびきりげんまん嘘ついたら針千本のーますゆびきった!」」



二人で顔を見合わせて笑う。
周りの皆はもういなかった。



「行こうか。決勝」


「うん」




皆の試合、観に行くよ。
楽しみだなぁ。




.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ