キセキU

□19.
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そっか、もう高校生だ。

あの時に通ってたとこに行くんじゃない。


みんなもあたしも
もう、


成長したんだ。



きっと。



あの日卒業した立海大付属中学校は、2年前に卒業した場所。


隣にある大きな建物は、あたしが来ることが出来なかった場所で、今から行く所だ。


四天の制服だったら目立つと思ってマネージャーの時に使ってるジャージで行くことにした。

これで部活の子だって見られるかなって思って。



来ることなんて思ってなかったから初めて足を踏み入れることに緊張してしまう。
一応校門の前にはいるのだけれど足が震えて動いてくれない。



「ねぇ昨日さー、バイトの先輩がさ」


人が来た。

さっと顔を背けてみるけど、
女子高生達はあたしの方を見ることなく話を続けていた。


今の、2年生の時に同じクラスだった子だ。

大人っぽくなったな。



もう忘れちゃったかな、あたしのこと。




何故か涙が溢れそうで唇を噛んだ。


今泣いちゃだめだ。

あたしには泣く権利なんてない



自分から逃げたんでしょーー…





「だからー、今先輩ダイエット中なんでしょ?やめといた方がいいっスよ!」



え、今の声…



「そうじゃよトンちゃん。お前さんなんとなく飛んだ時に重そうなり」


「お前ら毒舌だな」


「しかし、自分にベストな体重であればいいんですけどね」


「丸井たるんどる」



遠くからでも、周りの雑音が大きくても何故か彼らの声だけは別の世界に行ったかのように切り離されて聞こえる。



そして、



「お前ら好き勝手言い過ぎだろぃ!赤也!お前は先輩様を馬鹿にしてんじゃねぇ!仁王、てめートンちゃんってなんだ!豚じゃねぇ!ジャッカル…何もねぇ。柳生、地味にくるわ!真田、それ笑うとこかよぃ?」




ブン太の声だーー…



2年ぶりに聞くね。

安心感のある、この声…



今すぐ皆の前に行って、


「ただいま!戻ってきたよ!」


って言いたい。


言いたいのに、


言えないよ。



大好きな人達が目の前にいるのに話すこともできないなんて。



持ってきたマスクとキャップを被って彼らがいた方向へ歩みを進めた。


お願い、気づかないで。


一歩一歩近づいて行く。



「俺に身長抜かされてんのに体重そんな変わらないんスよ?」


「はぁ?俺だってもう170いきましたー。あともう少しでお前抜くから覚悟しとけよぃ!」



そんな彼らにとっては日常的な会話がとても心に染みてくる。
もしあたしが彼らに別れを告げなかったらその会話の中にあたしはいたのかな








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