キセキU

□12.
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「隠してること…?」



声が震えた。



「はい。美羽さんは明らかに俺、いや、俺らに何かを隠してますよね。」



光、ごめん

無理だよ



「光」



「はい」



「あたしには何のことかさっぱり分からないよ」



「美羽さんの癖なんかすぐ分かります。中学三年の時に出会って、今まで。美羽さんと過ごした時間は部長らと比べたらもしかしたら短いかもしれませんけどね、それくらい分かるんですわ。」



「癖…」



「美羽さん、そんなに俺、頼りないですか?」



「…」



「俺は、俺なら、部長みたいにあなたを不幸にはしない…」



不幸ー…



「光、蔵のことをそんな風に言わないで。」



「どうして美羽さんは部長のことをそんなに信じられるんスか。」



「……蔵は、あたしのことを分かってくれるから。」



「そんなん美羽さんの心の弱さに漬け込んで優しくしてるだけっスわ。」


「ちがう。ちがうの…」


「何が違うんですか。俺の目にはそうにしかうつってません。あんたらは、…俺たちに何か隠してる。」



「光ー…」



「…俺、美羽さんの泣き顔を見るんが一番嫌なんです。」



そう言われて気づいた。

あたし、泣いてるんだ。



「…今泣かせとるんは…俺なんやな…」


それは、今まで見たことない光の表情だった。

あたしの知ってる光は、いつも無表情に近い笑顔で、毒を吐いて、だけど周りをよく見てるそんな表情。


けどー…



「光、ちがくて…そうじゃ…っ」



「俺は美羽さんの口からちゃんと聞きたかっただけなんですわ。」



「…光」



「けど、もう聞いてしまったんや。」



ぽつりと独り言のように言った光は、下を向いた。


「…何を、聞いたの……」



「まぁなんとなく?予想ってか想像はしてたんです。美羽さんくらいデータとか調べられる力がある人がなんで中学ん時に帰宅部やったのに高校入ってテニス部のマネージャーなんかやったんやろうって。」



「そんなの、ただの気まぐれで…」



「美羽さん、俺に…あんたの口から嘘をつくところを見せんといてください。」



っ…



「俺は片岡さんに会いに行って話を聞いてきたんです。」



その瞬間、


あたしは手の力
いや、全身の力が抜けた気がした。


ガクガクと震える手
唇が妙に震える
大きく開いた目



あの時と同じ感覚



大事な、大切な何かを
壊したような




そんな感覚





「美羽さん」


「……めて」



「こっち向いて」



「……や……」



「……チッ」



ぐいっと今までとは比べものにならない力で腕を掴まれた。



「…やめてよっ……っ…」



目の前には、
目を綴じた光の顔



「…嘘、つかせたくないんで」



「…っ……う…っ…ひか…」



もう、無理だ。


この人には敵わない。



頬には温かい涙が流れてる。

あたしはきっと、
光にー…




「………助けて…」




誰かにずっと言いたくて、
言えなかった言葉を





「ええですよ。」




だって彼は
いつもあたしを助けてくれるから。






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