時雨
□18.
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『あんたなんかー…』
『お前さえいなければー…』
『あんたの居場所はもうここにはー…』
「奈央っ」
「…っはぁっ……っ…勇太…」
息が止まるかと思った。
何?今の嫌な感じ…
前にも何処かでこんな感覚に陥ったような…
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ。それより、これからよろしくね、勇太。」
「あぁ、奈央。」
腕を力強く握られてる。
双子だからといっても勇太は男で私は女だ。
「今、母さんと父さんはいないんだ。だから、俺の荷物片付けるの手伝ってよ。」
「分かった。着替えてからすぐ行くね。」
ねぇ、私、
ちゃんと姉弟らしくできてるかな。
「奈央、これこっち」
「うん。」
お互いあの事は話さない。
多分知らず知らずの内に禁句になってるんだと思う。
私達は姉弟だけど考えてることは全く違う。
どうして勇太が幸村に協力しているのかわかんないけど、
それでも勇太はー…
「奈央」
「え?」
「…それ、とって。」
「あ、うん。」
♪〜♪〜♪〜
「ごめん、私だ。はい、」
『奈央か?俺だ。今日、ちょっと母さんと飲んでくるな。すまないな。今日だけ、特別でいさせてくれ。』
「うん、分かったよ。明日、ゆっくり話し合おう。」
『ありがとな。奈央、今までほんとにすまなかった。』
「…うん。」
大丈夫、なんて言えなかった。
「父さん?」
「うん。今日はお母さんと二人でいたいんだって。ご飯は私が作るね。」
「分かった。奈央、料理できるようになったんだな。」
「まぁお父さんがあんなのじゃ必要にもなるよ。」
「そっか、昔のこと覚えてるか?父さんの誕生日に俺たちが誕生日ケーキ作ってやりたくて、奈央が自分は女だからできるって言い張って…」
「…え、そんなことあったっけ?」
「なんだ、覚えてないのか。」
「続き、は?」
「…で、結局母さんと俺が作ったんだ。奈央は確か泣いてた。」
「…そう。でも今料理できるんだからそれはいい思い出なのかもしれない。」
「そうだな。」
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