キセキ
□02.
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「さて、聞かせて貰おうかのぅ。」
「…仁王君、貴方には敵いませんね。」
こんなことを言われ、つい口元が弧を描く。
「私はテニス部の一員です。始めたのはつい最近でやっと周囲に溶け込むことができたり、物事を覚えることができました。」
「柳生は賢いぜよ。もっと早く覚えてたじゃろ。」
「つい最近ですよ。」
と、言って苦笑する。
あぁ、やはり人選は間違っていなかったようだ。
「それを踏まえたら私は丸井君を応援しなくてはいけない立場なのです。…しかし、」
「…ピヨ」
「細谷さんは私の友人です。マネージャーになる前から彼女を知っています。だから私は彼女の意思を尊重したいのです。」
「そういえばお前さん、美羽と知り合いだったな。あの時の美羽の驚いた顔は最高じゃったな。」
趣味が悪いですよ、と呆れているような顔をしているらしいが眼鏡でよく分からない。
だが、これから柳生にはこのペテンに何度も付き合ってもらわなければならない。
今はまだまだだが成長した後の柳生を考えると…
ゾクッ
自然と弧を描く口元。
やはりこの男は面白い。
「のう、柳生。それ、幸村に言ってみんしゃい。きっとその悩み解決するぜよ。」
「そうですか。では、この後相談してみましょうか。」
2人で顔を見合わせて笑う。
あの2人の恋は、どれだけ多くの人間に影響を与え、
どれだけの人から見守られてるんだろうか。
少なくともここにはおる。
2人が幸せになる、という選択肢は、
今のあいつらにないのかもしれない。
でもいつか、
今起きている出来事が馬鹿みたいだったね、と笑って話していたとしたら、
俺も大変だった、と
打ち明けてみようかと思う。
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