キセキ

□02.
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昨日のことで少しだけ幸村が苦手になった気がした。


あの貼り付けたような笑顔が気になる。


誰かをいじっているような、そんな笑顔なんかじゃなくて、


もっと、もっと何かを企んでいるような、そんな感じがした。


俺がペテンを考えとる時もそんな顔をしているんだろうか。




キーンコーン…



多分俺の読み通りであれば丸井が美羽に話しかけるのは放課後かつ誰にも見られないような場所である確率が高い。


なぜならば、


丸井と美羽の関係の変化は昨日と今日でかなりの範囲に知れ渡ったからだ。


さすがは美形同士。
一部では付き合っているという噂まであった2人だったから衝撃的なニュースだったに違いない。


そして、今までは隠れながら告白してた奴もこれからは堂々とすることができるようになったということだ。


ま、それも良かったのか悪かったのかは謎だが。




さて、




「仁王!」


「何じゃ。ジャッカルか。」



相変わらずひでぇな、と言っていたが無視。



「な、ブン太知らね?クラス行ってもいねぇんだよなー。」


「知らんのぅ」



「そっか。俺さ、一応美羽にもう一回マネを頼んだんだけど断られたんだよ。流石にショックだ。」



そういえばジャッカルと美羽は同じクラスだったな。



「ほう」



「しかもその後、苦い顔してどっか行ったんだぜ。こっちはまだ話終わってなかったんだけどなー。ったく、ブン太の為に言ってやってんのにな。」



ブツブツと文句を言っているが面倒見のいいんだな、と改めて実感した。




「まぁジャッカル。その行動が間違っとるとは言わんが、本人達に任せればいいんじゃよ。」



「…そうだな。」



「ついでに悪いが、俺も行くとこあるんじゃよ。部活は少し遅れて行く、と言っといてくれ。」



「はいはい。今日の部活は人数が少ないな。」



「…他の奴らは?」



「いや、別に。ブン太も遅れるらしいし柳生も委員会とやらで遅れると言ってたからなー。」




柳生が遅れるとは珍しいな。


委員会やっとったんか。



俺がテニス部に引き抜いたくせにあいつのことは何も知らんかったんか。








































「無理」



「…は?」



「あんたには耳が無いわけ?何回でも言うけど、マネージャーなんかもうやらないよ。」



「美羽、お前、俺が嫌だから辞めたんだろぃ?別にマネは楽しそうだったじゃんかよ!」



「…あのさ、今のあたしには無理だから。あんたは理由を聞いて何を思ったか知らないけどもう他人なんだから。」



「他人?無理なのはこっちだ。俺は他人になんかなる気はないんだよ。」



「だったらあたしが一方的に知らないふりをすればいいわけ?」



「だから、前までの関係に戻ろうって、そう言ってー…」



「あんたに何が分かるって言うの⁈それにあたしは今の距離が精一杯なの。あんたに近づいてもいい距離はこれだけなの。」



…どんだけ俺嫌われてんだよぃ…




「もう女遊びもしない。告白も受け入れない。約束する。」



「…」




分かって、くれたかよぃ、




俺の本気。











「…そこまでしてあたしに何の得があるって言うの?」







「美羽が好きだからだよ。」




「…っ、」





「俺、気づいたんだよ。美羽といたら心が騒ついて、いつもと全然違う俺になって、少し臆病になってた。」




「…」




「けど、俺はお前を傷つける奴だけは許せなかったんだ。だったら俺が代わりになる、そう思った。」




「…」




「この理由だけじゃ、駄目か?」


















おお、告ったな丸井。


流石じゃな。



こいつら、両想いなのは確実だからこのままいけば間違いなくOKだ。


けど、昨日の幸村の言葉が頭にちらつく。







『確かにどっちも大切でこれからも仲良くしていきたいと思っている人間だ。…けどね、自ら辞める、と言い、ここを去った。その部分を忘れてはいけないんだよ。』






『…どうして使えない駒を再度使おうとして無駄な時間を浪費しようとするんだい。俺は手の届く範囲にいるほうを優先したいんだよ。』





『仁王。余計な詮索は無用だよ。君が何を考えようと何も変わらない。』





他にー…




「そういうこと、誰にでも言えるんだ?最低だね。…、あたしを馬鹿にしないでっ!」



「…っ」




「あんたほんと最低だよ。用はこれだけ?誰が何と言おうとあたしはマネに戻る気はないしあんたを好きになることもない。」




………。



「待てよ…っまだ話は終わって…」



「離せよ」




こちらまでくる美羽の殺気ははんぱじゃなかった。


今にも人を殺しそうな、そんな目をしている。




「…じゃあこれが最後だ。」




「…」




「美羽にとって俺の気持ちは迷惑か?」




美羽、余りにも酷すぎる。


これくらいはいいだろう。




「…迷惑よ。」




…あの女…



文句の一つでも言っといてやろうかの。



「…仁王君。」



「何じゃ、お前さんか。」



柳生。




「偶然、というわけではなさそうですね。このタイミング。そこにいるということ。」



「それはこっちのセリフぜよ。お前さん、何も知らないんじゃないんか?」







「…怒られるの承知の上で来ました。」





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