キセキU
□16.
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正直の感想は、まぁそんなものか、だった。
部長の勝手な自己満でしかない。
そんなことで嫌がってたマネージャーを美羽さんにやらせた。
自分の目が届くところにいればあの時のような思いをしなくても済むから。
そして、いざとなったら自分で守ることができるから。
「美羽さんもアホですね。別に断ってもよかったんじゃないんすか?」
「…あたしには、あの時の蔵に断る勇気なんてなかった。それに多分、」
「…」
「あたしはテニス部に興味があったんだと思う。」
その言葉は多分四天のテニス部っていうよりかは、立海のテニス部に関わる形に何らかの方法でなりたかったのかもしれないけど。
「…美羽さん」
「ごめんね光。光が考えてる通りだよ。あたし、本当に最低。」
明らかに声が小さくなった美羽さん。
最低なんて思ったことない。
美羽さんだって一人の人間で、一人の誰かを好きになる女性なんだ。
「んなことないです。自分にもっと自信持ってください」
「でも、」
「過去の美羽さんが何をしようが、誰かを好きになろうが、最低だろうが今の美羽さんには関係ないでしょ。」
「ひか…」
「俺は今のあんたしか知らんし、確かに興味があって片岡さんとこ行ったんは本当やけど、別に美羽さんのこと見る目変わったわけじゃないんすわ。」
美羽さんの目に涙が溜まっていくのが分かる。
それを拭うことはできないけど。
「ありがと、光」
何回目かな、
あんたの俺への"ありがとう"は。
俺はいっつも言われる側で、
俺が言ったことはあんまない。
けど、ほんとは美羽さんに救われたことはいっぱいあって、"ありがとう"を言いたいのはいつだって俺の方。
ただ言えんのは、
素直になることが難しいから。
好きな人にくらい
正直になりたい。
「あっ、デザート持ってくる!」
涙を手で拭いながら、デザートを取ってこようとする美羽さん。
何か言えや俺。
俺が取りに行きますくらい言えるやろ自分!!!
♫〜♫〜♫〜
俺のケータイじゃない着信音。
ってことは美羽さんのやな。
テーブルの上に置いてある同じiPhoneの画面を見てみると、
"白石蔵ノ介"
部長からか。
ほんまあの人しつこいわ。
「お待たせ。昨日甘いものだったからアイスにしてみたんだけど、どうだろう」
「ありがとうございます。」
着信音、聴こえてたんやろうか。
特に携帯触る素振りも見せずに
俺がアイスを食うんを待っとるみたい。
「ん、うまい。」
「本当⁉初めて作ったからさ〜よかったぁ」
「美羽さんって美人やし、要領いいし、料理も上手いしなんやねん。完璧っすね」
「えー?全然だよ〜特に料理なんか苦手だったからね。最近やっと作れるようになったのよ?」
あはは、と笑う美羽さん
「ほんまです?」
「うん!立海でかなり指導されたの。あの時は料理がすごい嫌だったけど、光みたいに笑顔で美味しいって言ってくれる人がいるからかな、次も作りたいって思うようになったの。」
この人はどこまで俺を翻弄させるんやろうか。
なんでなん。
ああほんま。
「…光?」
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