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□俺がお兄ちゃんになった日。
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『カイリは、お兄ちゃんになるのよ』

『お兄、ちゃん……?』

『そうよ。仲良くしてあげてね』




そう言って、優しく、ふんわりと微笑む母さん。
当時の俺は『お兄ちゃん』も『弟』も意味がよく解らなくて、一体どういう事なんだろう?なんて思っていた。





それから数ヶ月後。
母さんが、顔いっぱいに汗をかいて苦しそうな声で唸ってて、そんな母さんの手をギュウっと強く握りしめながら、頑張れ。頑張れって母さんよりも苦しそうな声で父さんが言ってて。
病院独特の匂いと、
ピーンと張り詰めた空気。
俺は子供ながらに『イマ』が『大事な時間』なんだって、父さんの真似をして母さんの手を握りながらそう感じてた。






――オギャアオギャア……




母さんの声を掻き消して聞こえたか細くて小さな、でも凄い大きな声。
その声が聞こえた瞬間、俺の目からぶわっと涙が溢れた。

なんでだったのか、よくわからない。
それでも涙は止まらなかった。







▼▼▼
 



「カイリ、カイリ」




普通の病室に母さんは移されて、さっきまでの苦しそうな顔が信じられないくらい優しく優しく笑うベットの中の母さん。
父さんに促されながら、ベットに近づく。





「この子が、貴方の弟よ」




母さんのベットの横。
そこで、小さな小さな『弟』がスヤスヤと眠っていた。
そーっと覗き込んで、ぷにぷにとしたほっぺたをツンツンと指で触る。




「ん、んぅ、」

「!」




キュッと、指を捕まれた。
小さな小さな、本当に小さな掌で俺の指を力強く握りしめた『弟』




その瞬間、俺は『お兄ちゃん』になった。








俺がお兄ちゃんになった日。
(この子は、ぼくがまもるよ!)


 

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