オリジナル

□中学生時代
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靴を履き替え、他愛もない会話を交わしながら、二人は教室に向かう。

早く来たので、生徒はまばらだ。
朱騎と理瀬椰はギリギリで何時も来ていたから、今日もギリギリだろう。

がらりと、怜珠が教室の前の扉を開ける。
中を見ると、一人の男子生徒が机にとっ伏して泣いていた。

ぎょっと、怜珠は目を見開き、史津は扉前に固まる怜珠の脇から中を見る。
男子生徒を認めた史津は、怜珠を殴りとばし(「痛いよ史津!」)、生徒に駆け寄った。

「瑛、どうしたんだ!?」

「し、史津ー!」

ひしっと、瑛は史津に抱き付く。
史津はよしよしと、彼の頭を撫でてやった。

その様子を、怜珠は机の角にぶつけた頭を押さえながら見る。
怜珠は初めて見る顔だが、史津は知り合いみたいだ。

「瑛、大丈夫か?」

「うわー、隣のクラスの奴に、しかも初対面の奴に、『お前なんか大嫌いだ』って言われたー。」

「そっかそっか。気にしちゃ駄目だよ、瑛。それに、もう中学生だから泣くな、男だろう。」

男なら強くなくちゃと、史津は慰める。
瑛は涙を拭きながら頷き、「わかった。」と返した。

それから月日は経ち、現在。

「なぁ、瑛君。ここの英訳を教えて欲しいんだけど。」

英語の問題集を持って、怜珠は話している史津と瑛に言う。

瑛は顔を上げると、ニッコリと笑みを浮かべて、こう言った。

「今、忙しい。」




end
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