オリジナル
□死んだ振りはさせない
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とある朝。
瑛が史津を叩き起こす。
たたき起こされた史津は、「何だよ?」と目をこすりながら聞いた。
「ゴキブリー!僕の部屋!出たんだよ!!」
「ふーん、そりゃ運が悪かったな。んで?何で俺を起こす?」
「殺してよー!」
「無理、眠いから。」
そう言って、史津は布団を被る。
瑛はポカポカと史津を叩いた。
「寝ないでよー!」
「眠いんだって、理瀬椰とか怜珠とか、朱騎に頼んでー。」
「蜘蛛は殺したのに?」
「蜘蛛は、鬱陶しいから殺したの。」
そう言った史津の部屋の天井には、蜘蛛を殺した跡が残っている。
最近はそうでもないが、殺した跡は微妙な気分だった。
殺したために、天井に跡がついてしまったのだから。
「頼むよ、史津ー。」
お願いと言って、瑛は手を合わせて頼み込む。
史津は「仕方ないなー。」と折れ、談話室から蠅叩きを取ってくると、瑛の部屋に向かった。
「どこにいるの?」
「あの壁。」
瑛が指差す方を見ると、ゴキブリが一匹止まっている。
史津は物音をたてないよう慎重に近づき、力を込めてゴキブリを叩いた。
「コイツは死んだ振りするからなー。」
と言って、何度も叩く。
瑛が止めに入るまで、史津は叩き続けるのだった。
おわり