世界樹の迷宮

□気球艇
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「...で、これはどういうことなんだ?」

私は今、カーゴ交易場にいる。
目の前には腕を組み指をトントンさせもの凄い剣幕で港長が説明を要している。

「えっと...あの、ですね...なんというか...」

正座をさせられて相手は立っているせいか港長がいつもより大きく見える。
なんとも説明しずらい。してもしなくても三日三晩説教させられるであろう。
そんなことを考えてる私の横には、いたる所が破けボロボロになった気球艇が鎮座していた

「確認するが、これ、お前のとこの気球艇だよな?」
「はい」
「何をどうしたら気球艇がこんな事になるんだよ!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい竜巻に巻き込まれたあとでっかい竜に襲われてこうなっちゃいました」
「殴る」
「許してください殴るのは勘弁してください」

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「ったく、よくもこんなにしやがって...造るのにどれだけコストがかかってると思って...」

港長は愚痴をこぼしながら慣れた手つきで気球艇を修理している。
さすが港長であるだけあって早い。もうほとんど修復してしまった。
ちなみに私は未だに正座をさせられている。

「もうそろそろ正座やめてもいいですか」
「修理が終わるまで駄目だ」
「えー港長さんのケチー」
「あ?」
「なんでもないです」

そもそもお前が...とブツブツいいながら最後の仕上げに移っていた。
そして数分経ち、気球艇はものの見事に修復されていた。

「ほら、終わったぞ」
「わーいありがとう港長さん!」
「しっかし本当によくお前達無事だったな。怪我とかなかったのか」
「かすり傷程度でしたよなんとか」
「そうか...」

そう言うと港長は少し悲しげな表情で少しの間沈黙し、再び口を開いた

「お前達みたいに竜に襲われて被害が気球艇だけで済むなんて珍しいんだぞ。
 重症を負って帰還してくるのがほとんどだし最悪の場合気球艇だけが発見され帰ってくるケースもある。
 そういう事だから次からは本当に気をつけろよ。死んだりしたら承知しねえからな」
「はーい!殴られるのは嫌ですしね」
「分かればいい!あ、もう正座やめていいぞ」

そういえばずっと正座をさせられていたんだったと気づき立ち上がろうとしたが当然痺れがひどく無理だった。

「正座も...もう勘弁です...」
「ッハハ、これで懲りたな」

もう2度と竜巻に巻き込まれないようにしよう。そう誓ったのだった。

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