最強夫婦の物語
□第3話:ネギ・スプリングフィールド
2ページ/6ページ
夕餉の席、疲れ切った玖楼の言葉に妾は凍り付いた。
えー………すまんが、もう1度言ってくれんかの?
「だから、10歳の子供が教師やりにこっちに来るんだって」
「………いや、あり得んじゃろう」
妾達も体外常識から外れた存在だからと言って、さすがにそれは無いぞ。
そもそも、10歳じゃろ? 教員免許とか、労働基準法とかそーゆーのはどうなっとるんじゃ。
「ボクに言わないでよ。ボク達だって完全に事後通告だったんだから」
あの様子じゃと、相当会議では紛糾したようじゃな。
元々、あの茄子頭の学園長は一般人を蔑ろにする傾向がある。一般教員には何も知らせず、魔法関係者だけで話を進めておったのじゃろう。
………そうなると、その10歳の子供は魔法関係者という事になるの。
「いったい何者じゃ? その子供は」
「君も知ってるでしょ? ナギ・スプリングフィールドの息子だよ」
「………あの鶏頭か」
妾の顔はきっと苦々しげなものになっておるじゃろう。
ナギ・スプリングフィールド。“紅き翼”を率いて戦争を終わらせた英雄………となっておるが、その実態はほぼチンピラ。
紅き翼なんぞ大迷惑集団に他ならぬ。妾達も濡れ衣で奴らに追い回され、挙げ句の果てに世話になっておった者達にも多大な被害が及んだ(玖楼が必死に頭を下げておったのが今も忘れられん)。
「でも、息子の方は大分マシみたいだよ。向こうの知り合いに話聞いたら、顔はともかく、中身は正反対の真面目優等生タイプだって」
「ほう………」
意外じゃな。鳶は鷹を生むと言うが………。
母親はアレじゃろう? アリカ・アナルキア・エンテオフュシア。あっちに似たのかもしれんな。
「ま、少なくともボクには関係無いよ。ボクはF組の担任だし、A組とは関わり合いになりたくないし」
「それもそうじゃな」
顔を見合わせて妾達は笑った。
………が、翌日、玖楼も妾も見通しが甘かった事を思い知る事となる。