最強夫婦の物語

□第3話:ネギ・スプリングフィールド
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夕餉の席、疲れ切った玖楼の言葉に妾は凍り付いた。


えー………すまんが、もう1度言ってくれんかの?




「だから、10歳の子供が教師やりにこっちに来るんだって」


「………いや、あり得んじゃろう」




妾達も体外常識から外れた存在だからと言って、さすがにそれは無いぞ。


そもそも、10歳じゃろ? 教員免許とか、労働基準法とかそーゆーのはどうなっとるんじゃ。




「ボクに言わないでよ。ボク達だって完全に事後通告だったんだから」




あの様子じゃと、相当会議では紛糾したようじゃな。


元々、あの茄子頭の学園長は一般人を蔑ろにする傾向がある。一般教員には何も知らせず、魔法関係者だけで話を進めておったのじゃろう。


………そうなると、その10歳の子供は魔法関係者という事になるの。




「いったい何者じゃ? その子供は」


「君も知ってるでしょ? ナギ・スプリングフィールドの息子だよ」


「………あの鶏頭か」




妾の顔はきっと苦々しげなものになっておるじゃろう。


ナギ・スプリングフィールド。“紅き翼”を率いて戦争を終わらせた英雄………となっておるが、その実態はほぼチンピラ。


紅き翼なんぞ大迷惑集団に他ならぬ。妾達も濡れ衣で奴らに追い回され、挙げ句の果てに世話になっておった者達にも多大な被害が及んだ(玖楼が必死に頭を下げておったのが今も忘れられん)。




「でも、息子の方は大分マシみたいだよ。向こうの知り合いに話聞いたら、顔はともかく、中身は正反対の真面目優等生タイプだって」


「ほう………」




意外じゃな。鳶は鷹を生むと言うが………。


母親はアレじゃろう? アリカ・アナルキア・エンテオフュシア。あっちに似たのかもしれんな。




「ま、少なくともボクには関係無いよ。ボクはF組の担任だし、A組とは関わり合いになりたくないし」


「それもそうじゃな」




顔を見合わせて妾達は笑った。


………が、翌日、玖楼も妾も見通しが甘かった事を思い知る事となる。
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