最強夫婦の物語
□第8話:その日、期末試験【後編】
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誰にだって、忘れたい出来事の1つや2つはある。
まぁ、何百年も生きてるボクにだって、黒歴史って呼ばれるような事はいくつもある。
中でもダントツで葬り去りたい黒歴史が、5年前の「篠ノ之束の乱」。………出来れば、深い記憶の底に永久封印したい出来事だ。
『やっほ〜、みんなのアイドル束さんだよ! ぶいぶい!』
「…………………………」
『くぅくんお元気? 束さんは』
プツッ、ツーツーツー………。
だから、こうして元凶から電話がかかってきても、叩き切る事にしている。
てゆーか、どこで知った。ボクの番号。
「あ、あの………神崎先生?」
「ん? 何かな、篠ノ之さん」
「今の電話ですけど」
「出来れば、触れないで欲しいかな? かな?」
おっと、いけない。思わず2回言っちゃったよ。
とりあえずさ、自分でどんな顔してるか分かってるから、その怯えた顔やめてくれないかな? かな?
「つ、つかぬ事をお聞きしますが………姉とはどんな関係で?」
「元担任」
で、元師匠。
もう7年近くも前だっけ。
あの天災と知り合ってしまったのは。
「………そう、ですか」
単語だけで通じたらしく、篠ノ之さんはすごく悲痛な顔になった。
どうやら妹というだけあって、肩身の狭い思いをしているらしい。
今度、缶ジュースの1本くらいは奢ってあげる事にしよう。………もちろん、試験終了後にだけど。