最強夫婦の物語

□第7話:その日、期末試験【中編】
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緊急招集がかかった僕ら麻帆良学園の教師だったけど、こんな夜遅くにいきなり招集がかかっただけあり、中には機嫌の悪い人だっている。


同じ中等部の神崎先生がその一例だ。


なんていうか………無表情なのが逆に怖い。あの人、基本的に温厚だけど、たまに凄まじく怒る時があるから。


え、僕? いや、僕独り身だし、特に今日は予定も入ってなかったからいいけど、それでもやっと仕事が終わって帰れると思ってた時にこれだし。



「皆、集まってもらってすまんかったの」


「………学園長、生徒が行方不明だというのは本当ですか?」




不安を押し殺した声で、新田先生がそう尋ねる。


確かに、本当に行方不明だというのなら、すぐに対策を打ち立てなければならない。


まずすべき事は捜索隊の編成で、魔法絡みでないなら地元警察への通報。後は保護者への説明と………うわ、頭が痛くなってくる。




「それじゃが心配はいらん。情報伝達の齟齬での、行方不明になった生徒は現在、期末試験に向けての合宿中じゃ」


(すまんが、魔法先生はこの後残ってくれるか?)




表の声と同時進行で念話が聞こえ、魔法関係者は渋い顔になった。


ああ、また独断専行なんだ………。


学園長の独断は今に始まった事じゃないけど、何をするか出来れば説明して欲しい。


こういう時みたいに、心の準備とか必要なんだし。ハッキリ言って心臓に悪いし、胃も痛くなってくる。




「学園長! どういう事なのか説明してください!!」


「お、落ち着くのじゃ、新田先生」


「これが落ち着いていられますか! そもそも何ですか強化合宿って!!」




うん、これが普通の反応だよね。


実際僕らだって、学園長からの念話が無かったらくってかかってたし(明石教授やガンドルフィーニ先生も渋い顔のままだし)。




「………2-Aの担任、ネギ・スプリングフィールド先生から聞いています。同居人である神楽坂明日菜と近衛木乃香が、何も告げずにいなくなった、と」




新田先生の言葉に、会議室がざわつき始めた。


近衛さんは学園長の孫だし、神楽坂さんは………その、学年でもかなり残念な成績で、合宿に参加させるのも分かる気はする。


でも、これは明らかに依怙贔屓だ。成績の悪い生徒なら他にもいるし、これだとA組を贔屓しているとしか思えない。


………まぁ、参加させたくなる気持ちは分からなくもないけど。




「少し、よろしいでしょうか?」




静かに、けれども威圧感のある声で神崎先生がそう尋ねる。


その威圧感に、思わず僕らは息を呑む。




「葛葉先生、行方不明になった生徒は誰なのか分かりますか?」


「2-Aの神楽坂明日菜、近衛木乃香、古菲、長瀬楓、佐々木まき絵、綾瀬夕映、宮崎のどか、早乙女ハルナ……の8名ですが」




今上がった名前に、僕らは揃って顔を顰めた。


だって、その中の5人はある意味有名人だったから。


学年最下位である2-Aでも、更に最底辺に位置する5人組………何でも、生徒達の間では「バカレンジャー」と呼ばれてるらしい。




「あ、その数字は修正した方がいいと思います」


「え?」


「多分、そろそろですから」




意味深な言葉を神崎先生が呟いた直後、誰かが会議室へと近づいてくる足音がした。


大人にしては軽い足音だけど………もしかして、これって。




「失礼します!!」




会議室に飛び込んで来たのは、話の中心に上がっていたA組の担任、ネギ君。


真っ赤な顔で息を切らして、しかも何だか怒ってるようにも見える。思いっきり学園長を睨み付けてるし。




「………学園長先生!! これはどういう事なんですか!?」


「ふぉ!? な、なんの事じゃ?」


「………図書館島の外で、宮崎さんと早乙女さんを見つけて話を聞きました」




行方不明になってた生徒の内、2人を!?




「学年最下位のクラスが解散で幼稚園からやり直しって何ですか! 魔法の本なんて変な噂話………どうなってるんですか!?」




………なお、学園長が僕らの冷たい視線を浴びる事になったのは言うまでもない。
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