□諺シリーズ〜鬼の撹乱
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「…」あれから30分とたたずにお粥を作って部屋に戻った白澤の目に飛び込んで来たのは、書類を枕に机で眠りこけている鬼神様だった。
「あーもー!しょうがないなー」とりあえずお盆を置くと、ぶちぶちと文句を垂れつつ相手を寝台に運ぶ。そしてやれやれと手を引こうとして、白澤は固まった。鬼灯の手が、白衣をしっかりと掴んでいるのだ。動こうにも動けず、ましてや起こすわけにもいかない。どうしたものかと困っていると、鬼灯が寝返りを打った。―白澤の白衣を握ったまま。
「おわっ、わ!」声をあげながら、白澤は白衣が破れそうな程の力で寝台に引っ張り込まれた。
「…看病しに来たんだけどなぁ…」抱きまくらの様に鬼灯に抱きしめられて、白澤は頭をかく。吐息を感じる距離にいる鬼灯は、熱のせいか頬を朱く染め、しかしゆったりと幸せそうな笑みをたたえている。その表情につられて微笑むと、白澤は目を閉じた。そっと優しく抱きしめ返して、良くなりますようにと願いながら。
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