□多忙なあの人
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多忙なあの人











最近お互い忙し過ぎて、一月以上顔を合わせてもいない。根が遊び人な白澤は色々限界だった。
『…鬼灯』顔を見れないならせめて声を聞きたいと電話をすると、かなりいらついた声が出た。
『何の用ですか?これから叫喚の工事の進み具合を査察に』しかも仕事モードだ。
『わかったわかった。でも仕事の話は無し!』
『で、用件は?』
『会いたい』
『…………は?』電話の向こうで唖然としたのが伝わってくるような声が返ってきた。
『会いたいんだよ、本当に。もう一ヶ月以上会って無いんだよ?色々限界なの!』
『一番近い私の休みは明々後日ですが…あなたは明後日から三日間くらい西洋との医学会に出席予定なのでしょう?』かなり事務的な正論に言葉につまる。
『…そうだけどさぁ…第一何でこんなに休みが合わないわけ…誰かの陰謀?』
『ただの偶然でしょう』恨み言はバッサリと切り捨てられる。
『だろうけどさ…』
『特に用件が無いのでしたらこれで。忙しいんです』プツリ。
「………」切られた。まぁ本当に忙しいんだろうけど、いくらなんでもつれない対応じゃなかろうか。久々に話した、仮にも恋人に対して。
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