□馬鹿
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馬鹿















どうしてあんな年中発情野郎を好きになってしまったのだろうか。

もう何百回と自問した事を反芻しながら、鬼灯は忌ま忌ましげに寝台で眠りこけている神獣を睨みつけた。当の本人は「リリスちゃんは相変わらず美人だねぇ〜」などと寝言を言っている。つい数時間前まで自分を散々抱いておいて、夢に見るのは別な女性。こういう性分だと知ってはいるが、それを許せるかはまた別の話だ。毎度毎度、これで終わりにしようと思うのだけれど。
「…」その度に、「本当に好きなのはお前だけだよ」なんて、甘い言葉を囁かれて。その声の、その手の優しさと温かさにほだされてしまう自分がいる。否―本当は、信じたいのだ。彼に真に愛されているのは自分だけだと。そんなわけが、無いのに。
「―いつまで寝てる気だこの淫獣!」苛立ちのまま力任せに寝台から蹴落とすと、「ぐぎゃ」と変な音を出してやっと目を開けた。
「んん…もう朝?」寝ぼけまなこで再び寝台に潜ろうとする白澤をドアまでぶん投げて、鬼灯は身支度を整える。
「何すんだよ…朝っぱらから…暴力反対」
「黙れ。そして帰れ」
「酷っ!さっきまで僕に抱かれて可愛い声出してたくせにぐぼぁああ!!」くだらない事しか言わない口を金棒で殴って黙らせると、鬼灯はすたすたと私室を出た。
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