貴方への想いを。

□変わる気持ちと、その原因。
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何も変わらない日々。

ただ緩やかに流れる日常。


この前まで、色々と在りすぎた日が続いていたと言うのに、まるで何も無かったかのような、今までの平凡な日常が、この日向家に戻っていた。


ケロロもすっかり今まで通りで、たまに視線が気になるときはあるが、変わらない。

ドロロも、タママもいつもを続けている。

そしてあの、一番怪しく思っていたクルルでさえも、いつものアイツに戻っているように見える。


そうだ

これが今までだった。




…そうか。


どうやら俺だけが変わってしまったらしい。



俺は銃を磨いていた手を止め、ひとつ溜め息をついた。



どうしたものだろうか…。




この前、初めてみたクルルの嬉しそうな笑顔。
それが頭から離れなくなった。

思い出す度、鼓動が速くなり、どうも落ち着かず、何も手につかなくなった。
これは戦場に行けば、即死であろうレベルだろう。


あと、今一番悩まされている事が、あの日からどうも、クルルが可愛く見えて仕方がない。

全てが強がりや、反対の言葉に聞こえる俺の耳は、もう駄目なのだろうか。


……いや、確実に使い物にならんだろ…。


俺はまた二度目の溜め息をついた。



「本当にどうしたと言うんだ…。」

「…何がっすか。」

「どぅわぁああっ!?」


いきなりの聞き慣れた仲間の声に、鈍い音をさせて後ろに倒れ込む。


「クック…コレはまた変わった訓練ですねェ?ギロロ先輩。」


俺の顔を覗きながら、馬鹿にしたように笑い、手を差し出すクルル。



………可愛いな。

ってクソ!!また俺はっ!!



俺は大きく頭をふり、脳内の何かを打ち消す。


「…大丈夫だ。自分で立てる。」


軽くクルルの手を払い、起き上がると、元の場所へ腰かける。

黙ったまま俺を見続けていたクルルが、ニヤニヤと笑いながら口を開く。


「最近どうしたんすか先輩。えらく鈍くなったんじゃねェの?それじゃあすぐ死んじまうぜェ?」


そういつもの嫌みを言うと、いつもの独特な嫌な笑いをするクルル。

今までの俺なら、すぐに、今この手に持っている銃をアイツに向けていたところだろう。

それをしないのは、やはり、俺のなかでコイツが変わってしまったせいだろう。


「…何だクルル。わざわざそれを言いに来たのか?暇な奴だな。」


とりあえず落ち着けと自分に言い聞かせ、何事もないような口調で返す。

それを聞いて更にニヤニヤと笑うクルル。


そんな態度に少しイラッときた俺は、意地の悪い言葉をヤツに投げ掛ける。


「…いや、貴様がわざわざ言いに来るぐらいだ…俺の事を心配しているのか?…貴様にも可愛いところがあるんだな。」

「!」


俺の作戦通り、クルルは驚いたみたいで、暫く黙った後、俯いてしまった。



ほう…コイツにもこんな反応が出来るんだな。



そう思いながらニヤニヤと笑いながら、更なるクルルからの反応を待った。

すると、黙ったままだったクルルが、ボソボソと何かを呟きながら少し顔を上げた。


その顔は、ヤツにはありえないほど、リンゴのように真っ赤な顔で、困った様な表情は、今にも泣きそうだと感じた。


ヤツの言葉を、ちゃんと理解するには少しかかったが、その言葉に、俺も暫く固まる事になってしまうとは、思ってもみなかった。





『心配して悪ィかよ…ばか。』





 

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