貴方への想いを。
□お前の呼ぶ声がして。
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「…それでね、ギロロ…。」
「……ん?」
「……何よ。どうかしたの?」
今までケロロの愚痴をしゃべっていた夏美が、変なものを見るような目で俺を見る。
「…いや、今何か声が聞こえてな。」
「声?」
「そんなの聞こえなかったわよ。」なんて言いながら、夏美は愚痴を続けている。
…いや、確かに聞こえた。小さい声だったが…。
俺を呼ぶ声。それも何度も。
今はもう完全に聞こえなくなってしまっているが、はっきりと思い出せる。
―…ギロ…せ…ぱい…―
…誰だ?…知っている声?
……クルル?
何でアイツと重なるんだ?
しかも俺に好きだと言ってきた、あの時のクルルと…。
「ちょっと!ギロロってば聞いてるの!?」
「うぉあっ!?」
目の前の夏美が、不機嫌そうに腕を組んで俺を睨んでいた。
それにしても近い…!近いぞ!夏美…っ!!
「もういいわよ。」なんて言いながら夏美は、日向家の中へ消える。
俺は少し惜しく思いながら、直ぐにさっきの声の主の事を考える。
本当にあの声がクルルだとしたら…。
「苦しそう…だった…な。」
まるで助けを求めるような…いや、アイツに限ってあり得んな。
だが…―
明日にでも少し様子を見に行ってやるか。
もしかしたら地球侵略の事で行き詰まっているのかもしれんしな。
それに様子がおかしかったのと、あの告白の理由も聞けるかもしれない。
俺はそう考えながら焚火を消し、テントに入った。