君を、愛する
□4.この痛みまで、
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再会を果たし、僕の名を呼びながら腕の中で泣いていた**は、湯気のたつカップを差し出した。
僕がお礼を言ってそれを受け取ったところで、
「…どうして今なの?」
と、抑揚なく尋ねてきた。
僕を座らせておきながら自分は椅子に座らないで、窓の外を気だるそうに見ていた。
「いつか聞いた台詞だね」
「そう」
あなたったら、答えてくれなかった。
と非難めいた風に言って、僕を睨みつけた。
今度はこちらが目を逸らす番だった。
先程カウンターから拝借した小箱をポケットの中で握る。
会って、すぐに連れ去るつもりだったのに…。
彼女に関わると、毎度僕の予定は狂う。
「…結婚、するの?」
小箱をテーブルの上に置くと、**は目を見開いた。
孤児院に居た頃、常習的に盗みを働いていた僕には造作ないことなのだけど、彼女には勿論そうでないので訝しげな顔をしていた。
「正直、迷っているわ。
彼は…貴方と違って、一方的に離れる人じゃないから」
「…手厳しいな」
結構、内心では傷ついている。
あぁ、ほら…無理矢理にでも、連れ去って、僕の目にしか触れない場所に閉じ込めてしまえばよかったんだ。
僕の言葉のあと、間を開けて、少し躊躇いがちに**は言った。
「…それだけ、あなたを愛していたのよ」
思わず、目を見開いた。
ちょ…っと、待って。
さっき、『結構、内心では傷ついている。』なんて言ったけど、今ので全部吹き飛んだ。
素直に今の驚きを伝えれば、彼女は複雑そうに頬を膨らませた。
「……**、今でも僕を、少しでも愛してくれている?」
彼女が、あの日のようにyesと応えてくれたなら…願いを込めて彼女を見た。
彼女は黙り込んだ。
考え事をしている風ではない。
どちらかと言えば、答えを口に出せないでいるように見えた。
不安に駆られ、彼女の名を呼んで、乱暴に口づけた。
何年かぶりの彼女の唇に気持ちが昂るのと一緒に、少し強張る彼女の身体にやっぱり不安を覚えた。
そうなると、彼女への愛撫はどんどんと激しくなっていった。