白雪姫は朝靄のなか

□参
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「えっ、じゃあお二人はもう成人されているんですか…!?」
「まぁ鬼に、年齢はあってないようなものですから」
「カルチャーショックです…」


可愛いおめめをぱちくりさせる様は天使のようだ。

篁さんの言う通り、遥々天国まで訪ねてみてよかった。

お茶汲み係(と言う名の癒し)を欲していた閻魔大王も、麗しいかんばせを持つ宵さんを気に入り、要請を自ら却下した。

正に一石二鳥。
いや、収穫はもっと大きいだろうか。


「なんだかお二人って、わたしの弟に似ているんです。
 …弟に会えたみたいで、なんだか嬉しい」
「えへへ」
「〜〜っ」


はにかむ茄子さんと、悶える唐瓜さん。
この小さいケモノ共めが…。
私のジト目に気付いた宵さんが、きょとんとしてふふっと目を細めた。


「鬼灯さんはお兄ちゃんみたいです。
 あと…初恋の人になんだか似ています」
「ほう…初恋ですか」
「え、あ」


途端顔を真っ赤にさせて目を逸らす。


「わ、忘れて下さい…」


両手で顔を覆いながら消え入りそうな声で呟くそのさまはやはり愛らしい。
あぁ、癒しです。

「宵ちゃんの初恋かぁ、告白したの?」
「ええ…。
 お返事を受け取れないまま死んでしまったので、勿体ないことをしましたね」

宵さんは閻魔大王の質問に寂しそうに答えて、すくっと立ちあがった。


「今日はこれでお暇しますね。
 また明日、お伺いします」
「ええ、お願いします。
 気をつけてお帰り下さい」
「ばいば〜い、宵さん」
「ふふ、茄子さんも、唐瓜さんも、また」


去り際に見せた笑顔は、やはりどこか寂しげだった。


『あと…初恋の人になんだか似ています』


宵さんの柔らかい笑顔にはまるで加護欲をそそられましたが…。
嫌ぁ〜〜な予感がします。



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