白雪姫の白昼夢

□参
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耳の聞こえない少女に、どう声を掛けろと言うのだろうか。

白澤がうーん…と唸っていると、少女がふと窓を見やった。
そして、初めて二人の目がかち合った。

白澤はびくっと肩を震わせ、少女は僅かに目を見開いた。
焦る白澤と裏腹に、少女はすぅ、ふぅ、と深呼吸をして、傍のスケッチブックを手に取った。
さらさらと鉛筆で文字を書き込む。
白澤はなんとか意識を取り戻しながら、神妙な面持ちでそれを見つめる。


『あなたは、どちらさまですか?』


…喋れないのか、と白澤は瞬時に判断した。
少女に差し出されたスケッチブックを手に取り、書き込む。


『ボクは白澤。
 キミは?』
『わたしは、宵と言います』


宵ちゃん。
初めて知る少女の名に、じわりとまた嬉しさが滲む。


『先日のミヤコワスレは、白澤さんが置いてくださったのですか?』


書き加えられた言葉を読み、少女を見ると、黒の瞳と目が合う。
白澤が頷くと、少女は少し微笑み、『やっぱり』と書き足した。
笑うと“神秘的”に“愛らしさ”が追加され、白澤は身悶える気分だった。
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