白雪姫の白昼夢
□壱
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「よいしょっと…。
うーん、採った採った」
人里から少し離れた浅くはないその森には、日本で取りうることができるほとんどの種類の植物が植わっている。
深くはないが、浅くもないその森は手慣れのものでなければ迷ってしまう。
獣道ばかりのその森の小高い丘にて、白衣姿の青年がぐぐっと伸びをする。
片耳にぶら下がった洒落た耳飾りと言い、切れ長の瞳のまなじりに彩られた紅と言い、どこか浮世離れした不思議な雰囲気を放つ中々の美青年である。
岩の上に置いてあった籠を見下ろしてから足下に生える植物に目を止め、屈んでそれを二房ほど摘み取って籠の中に追加した。
籠の縁近くにまで到達しそうなほど、その籠の中にはたくさんの草花が入っている。
青年は満足げに微笑みながら、ふと視線を上げる。
「…あれ?」
丘の下、小さな家が見えた。
(「おかしいな…前来た時はなかったのに」)
ワインレッドの屋根、こげ茶色の扉、精巧な飾り窓。
壁に這うツタ、ツタ、ツタ。
童話で登場してくるような可愛らしい家だった。
以前は見かけなかったそれにひどく興味をそそられ青年はにんまり笑って丘を下った。