K×O
□王泥喜くんの事件簿・2
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「付き合ってないなら、良かったよ」
「?どうしてですか?」
「ん?アトロキニーネ、今のところは用意しなくても良さそうだからさ」
………やっぱり本気だったのか、この人。
「…ま、それは冗談だけどね」
嘘だ。
オレがうっすら青ざめてるのに気付いてフォローを入れたつもりらしいけど、今の眼はかなり本気だった。
「いいかい?オドロキくん。牙琉検事に背中を向けちゃあダメだよ?」
「背中?どうしてですか?」
背中を向けるな。だなんて、何かのドラマじゃあるまいし。
ワケがわからず、ぱちくりと瞬きを繰り返すオレに、成歩堂さんは拳銃の形にした右手を向けて、とんでもない事を言い放った。
「背中向けたら…オドロキくんの貞操、奪われちゃうからね?」
「てっ、貞操―――!?」
成歩堂さんの忠告が頭の中をぐるぐると回り止まらなくなったオレは、その日はもう仕事が手に付かなくなってしまい。
依頼が滅多に入らない職場である事に、この日だけは感謝した。
一方、
「善は急げって言うよね」
と、謎の言葉を残して出掛けて行った成歩堂さんは、先生の元を訪れ。
「牙琉…アトロキニーネって、どうやって手に入れるんだ?」
と問いかけ、先生が盛大に噴き出した紅茶を顔面に浴びたのだとか。
…わ、笑えない。
(…そういえば、何でオレの珈琲だけ避けられたんだ?)
end.