K×O
□王泥喜くんの事件簿・2
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ある種の嵐の様だった牙琉検事が帰ってくれた事で、事務所には平穏が訪れた。
特徴的なバイクの音が遠ざかるのを聞き、無意識にふぅ、と息を吐く。なんか肩、凝ったな。
「オドロキくん」
「あ、はい?」
声をかけられたのでそちらを見ると、事務所の入り口に立っていた筈の成歩堂さんが、オレの正面にあるソファの、さっきまで牙琉検事が座っていた位置に腰を下ろし、ジッとこちらを眺めていた。
「何ですか?」
しかし一向に口を開く様子がない。
成歩堂さんは、人に呼び掛けておいて何も話さないという何とも奇妙な事をしょっちゅうする人なので、事務所に入りたての頃は戸惑っていたオレも、今ではすっかり慣れてしまった。
なので、とりあえず珈琲でも飲もうかと、すっかり中身の冷めてしまった愛用の赤いマグカップを口に運んだ。
その直後。
「オドロキくんって、牙琉検事と付き合ってるのかい?」
ブッフォォッ!
「わ、びっくりした」
「…びっくりしたのはこっちですよ。何なんですか、いきなり…」
珈琲を噴くなんて、オドロキくんてばゴドーさんみたいだなぁ。等と言いながら、はっはっは、とのんきに笑う成歩堂さん。
しかしオレが飛ばしてしまった珈琲の飛沫はしっかりと避けている辺り、伊達に神乃木さんの珈琲を食らい続けているワケではないらしい。
「だって、何か迫られてたみたいだから。イチャイチャしてたのかな、ってね」
「…そんなんじゃないですよ…」
確かに、迫られてた事は否定しない。しかしイチャついていたと見られるのは心外だ。
「じゃあ、付き合ってるワケじゃないんだ?」
「違います。そんなワケないでしょう?牙琉検事、男ですよ?」
「…それはぼくとゴドーさんに対する挑戦かな?オドロキくん」
「あ、いや、そういうワケじゃ…」
うっかり地雷を踏んでしまい、オレは内心かなり焦ったのだが、当の成歩堂さんは実はそれほど気に止めなかったらしく、コロリと笑顔を見せた。
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