Y×O

□おやつタイム。
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「はあ…」

ユガミ検事が帰ったと同時にソファに倒れ込んだオレは、頭の中を同じシーンばかりがぐるぐる回っていた。

言わずもがな、ユガミ検事とのキスシーン…だ。


「うう…何だったんだ、あれは」

呟いたところで答えなんか出る筈もないんだけど、言わずにはいられない。

だって、よりによってキ、キ、キスされるなんて…っ。

「冗談にしたって悪趣味だっての…」
「何がだい?」
「何ってそりゃ、キス…」

!?

バッと勢いよく起き上がると、ソファの近くまで来てこちらを伺っている成歩堂さんと目が合った。

「な、な、な、成歩堂さん!?」
「ただいま、オドロキくん」
「あ、おかえりなさい。…っていやいや!いつの間に帰ってきたんですか!?」
「いつって、今さっきだけど…」

慌てふためくオレを不思議そうに見やりながら、成歩堂さんは手に下げていた小さな紙袋を渡してきた。

「御剣からお土産。ナントカってホテルのプリンだって」
「はあ…どうも」
「あ、そうだ。事務所の前でユガミ検事に会ったよ」
「!?」

あやうくオレは床にプリンを落としそうになった。

「?どうかしたかいオドロキくん?」
「だ、だ、大丈夫です!」
「?ならいいけど…」
「あ、あの…ユガミ検事、何か言ってました?」
「何かって?」

成歩堂さんが首を傾げる。
そりゃそうだよな。藪から棒にそんな質問されたら変に思うよな。

「いや、ええと…カレーを一緒に食べたんで…」
「ああ、「ウマいカレー食わせて貰ったぜ」とか言ってたよ、そういえば」
「そ、そうですか」

会話がどうにか丸まった事にホッとする。
それと同時に、ユガミ検事が成歩堂さんにもカレーが美味しかったと告げていた事実に照れ臭くなる。
市販のルーで作った、ごく普通のカレー。
こっそり入れた隠し味は内緒だけど、喜んで貰えたのは素直に嬉しかった。

「あ、そういえば」
「え?何ですか?」

冷蔵庫を開けた成歩堂さんが口を開いたので、視線を向けると…。

「「ウマいデザートもいただいたぜ」とか言ってたなぁ」
「!?」
「?オドロキくん?」

一瞬で顔が熱くなった気がしたのは、きっと気のせいじゃない。
蘇るのは、唇の柔らかさと温かさと、絡み付いてくる舌先の…。

「…おーい、オドロキくん?」
「!!」

成歩堂さんに頬を突っつかれて我に返る。危ない危ない、トリップしかけてたみたいだ。

「だ、大丈夫です!王泥喜法介は大丈夫です!」
「…あんまりそうは見えないけど…」

となりに座った成歩堂さんが、メチャクチャ不審そうに視線をくれる。
うう…だよなぁ、オレ挙動不審だもんな…トホホ。
それもこれもユガミ検事がいきなりキスなんかしてくるからで…。

「もしかして…ユガミ検事に何かされた?」
「な!?な、な、何かって!?」

うう…思い切りドモッちまった。
成歩堂さんが鋭いのかオレがわかりやすいのか、とにかくこの空気は気まずい。視線が痛い。

「…ねえ、オドロキくん」
「はい?」

視線を反らすオレを呼んだ成歩堂さんは、くい、と顎を持ち上げてきたかと思うと…。

チュ。

「!?」
「あ、やっぱり桃の匂いがする」
「な、な、な、成歩堂さんっ!?」
「最後の1個だったやつ食べちゃった罰だよ」

帰ってきたら食べようと思ってたのに。と呟いた成歩堂さんが、何事も無かったかのようにお土産のプリンを取り出す。

その隣でオレは、二度も男にキスされた今日という日をしばらくの間は忘れられそうにないなと、ひとり湯気を立てていたのだった…。





ナルホドくんはゴドナルとかミツ→ナルが好きなんだけど、ナルオドも可愛いですよね。
みぬきちゃんはビビルバーに直行した模様。
2013.8.28

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