Y×O

□昼食2
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「っ、ちょ…ユガミ検事っ」

王泥喜法介24歳、只今ピンチです。





「は、離してくださいよっ」

腰を抱かれてシンクに追い詰められている現状が理解出来なくて、目の前の人に訴える。
けれどユガミ検事はニヤリとした笑みを崩しもせず、更に顔を寄せてきた。

「ちょ、近い!近いですって!」
「あア?近付いてンだから当たり前だろうが」
「何で近付くんですか!離れてって言ってるでしょ!?」
「うるせエな…ンなデケエ声張らなくたって聞こえてらァ」
「っ!」

ベロリ。そんな音が聞こえそうな動作でユガミ検事が舐め上げたのは俺の耳。
その生温かさとか湿った感触とかユガミ検事の匂いとか、色んな物を一気に認知した俺の体温は一瞬で上がった。

「な、な、何す…んっ、」

耳朶を甘噛みされて、何するんですか!と言うはずの口からは明らかに色付いた息が漏れてしまう。
自分のそんな声を聞きたくなくて口を塞いだら、すかさずその手を捕らわれて剥がされてしまった。

「塞ぐのは無しだぜエ?泥の字」
「も、っ止めてくださいよ…悪戯にしたって質が悪すぎますっ!」
「そう睨むな。チョイと味見しただけさァ」
「味見するならカレーにしてください!」

悪さするなら作ってあげませんよ!と声を張り上げると、ユガミ検事はようやく身体を離してくれた。

「へいへい…うちの嫁サンはおっかないねエ」
「誰が嫁ですか誰が」

嫁だの主婦だの…さっきからオレを何だと思ってるんだ、この人。

「全く…ユガミ検事がふざけるから作るのちっとも進まないじゃないですか」
「ちゃっちゃと作ろうぜ泥の字。腹ァ減った」
「アナタが変な事するから遅くなったんでしょうが!」

端から見たら漫才みたいなやり取りをしながら調理を進めていく。
ユガミ検事がちゃんと手を動かすようになってからはスムーズで、30分後には完成していた。

「ユガミ検事、ご飯どのくらいいります?」
「大盛りで頼むぜ…腹ペコだからなア」
「このくらいですか?」
「少ねエ。もっと多くていいぜ」
「はいはい…」

言われるままによそった量は最早大盛りというよりは特盛りだ。オレも腹ペコだったから沢山よそったけど、それでもユガミ検事の半分くらいだ。

「何だ?そんなちょっとしか食わねエのか?」
「普通です。ユガミ検事が多すぎるんですよ」
「そうかい?そんなんだからちっこいンじゃねエのか?」
「う、うるさいな…放っといてくださいよ」

カラカラと豪快に笑ったユガミ検事は、これまた豪快にカレーを口に運ぶ。
表情が変わらないから不安になって、どうですか?と訊ねてみると、ユガミ検事は視線を合わせて笑みを見せた。

「ウメェぜ。さぞかしいい嫁サンになれるだろうさア」
「だから、なりませんってば」

すかさず突っ込むオレにまた楽しそうに笑ったユガミ検事は、ガツガツとカレーを消化していく。
ユガミ検事が完食した時、オレはまだ半分しか食べ終えていなかった。

「お前さん、食うの遅エな」
「ユガミ検事が早すぎるんですよ…」

麦茶をガブガブと飲み下したユガミ検事は、未だにカレーと格闘するオレを何やら楽しそうに眺めてくる。
何ですか?と訊ねようとしてユガミ検事の顔をみた俺は、ある事に気付いた。

「ユガミ検事、ご飯ついてますよ?」
「あア?」
「ほら、ここ」

口のすぐ横についていたご飯粒を、手を伸ばして摘まんで取り除く。
そのままある動作をしてから意外と子供っぽいんですね、と言ってやると、ユガミ検事は何故かテーブルに突っ伏してしまった。

「ユガミ検事?具合でも悪いんですか?」
「天然ヤロウか…コイツは厄介モンだア」
「??」

ご飯粒を摘まんで取った挙げ句当たり前のように食べてしまったオレに、ユガミ検事が完全にノックアウトされていたなんて、当のオレは全く気付いていなかったのだった…。





料理上手なオドロキくんはさぞかしいいお嫁さんにr
2013.8.21

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