人魚恋捕物帳

□其の参
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香撫はようやく泣き止み寝てしまったらしく今はイタクの膝の上に乗っけられ抱きかかえられてる状態だイタクは側にあった木に寄りかかり香撫を受け止めている抱きこむ時にずれたのかいつもは額に当てられてるバンダナは首のあたりまでずれていた。それをなおすのが面倒だったのかそのままにされていた



「随分派手に泣かしてくれたな」



「お前、誰だ?」



イタクは目の前に現れた男に問いかけた、いや本当はこの男を知っている着ている者や髪型などで判断できるが目の前の男はイタクが知るそれとは異なった



「ああ、こっちで会うのは初めてだな・・・まあこっちもあっちも同じ天馬なんだけどな」



天馬、体の大きさに似合わず人懐っこくへらへらしててどんな胃袋してんだってくらいよく食べる赤毛の男。だが今目の前にいるのは目つきの悪いおっかない顔をした子供には見せたくない感じの白髪の男



「普段は枷があるから出てこれねーんだが今回その枷の精神が酷く揺れたから出てこれた」



「枷って」



「今お前が抱き込んでるやつだ」



天馬が指差したのは香撫だったどのようにこの白天馬を赤天馬にしてるのかは分からないが泣いた事でその枷が歪み出てきたんだろうイタクはそう解釈して天馬を見た



「お前こいつに惚れてんだろ?物好きだな」



「好きに言え」



何で知ってんだと思いながらも今はそれは無視しておこう天馬は何か用事があってここに来たんだろうと考えながら問いかけを待った



「まあいいか、鎌鼬そいつとそらるって事は覚悟がいるぞ?」



「覚悟?」



まだ何かあるのかそれも飲んでやればいい、受け入れてやればいいイタクはそう思った



「そうだ、俺とガキを養う覚悟だ」



「自立しろ」



覚悟の内容にイタクは思わずひっくり返りそうになったガラにもなくそんな事をしそうなイタクに天馬は笑っていた



「冗談だ、半分は」



「半分かよ」



このシリアスなシーンでネタをぶち込む勇気に馬鹿かと悪態をつきたくなるが止めておこう天馬はしゃがみ込みイタクの目を見た揺らぎない強い目に天馬は満足したような顔をした



「お前なら大丈夫そうだ」



それだけ言って立ち上がり二人に背を向けた日が昇るまでに帰るようにだけ言ってそんな背中にイタクは声をかけた



「待て」



「あ?」



振り返った天馬ににイタクは投げかけた



「お前いつから聞いてたんだ?」



「あー、・・・盃は交わさんぞくらいから」



「全部じゃねーか!」



「安心しろこの事は淡島以外には言わねーから」



「一番言うな!」



あのスピーカーの事だ聞いたら話を端折りまくって盛りに盛った話が里中に知れ渡るのは時間の問題だ



「はいはい、わかったよ」



今度こそ天馬は二人に背を向け立ち去った残されたイタクと香撫はそのままそこに居た香撫は寝ているため動かないし聞いてもいないがイタクは自分の肩に額を押し付けて眠る香撫を起きないように動かして香撫の髪を耳にかけ耳元で囁いた



「好きだ」



寝ていて聞こえてない相手でも顔を赤らめるイタクの耳に聞こえるはずのない返事が聞こえた



(うん)



『あたしも好きだよ』



 
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