KIRI-REQU

□ほのぼのフェアリー
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※『怪しい物を口にしてはいけません。』の番外編です!















「長次〜v一緒に遊ぼーぜ!」




長次のいる保健室に、勢いよく留三郎が入ってきた。今日は食堂のおばちゃんが出掛けているため、長次は新野先生に預けられていたのだ。




「うるさいぞ留三郎。長次が驚いてしまうだろうが。」



しかし保健室には先客がいて、仙蔵が長次に本を読んでやっていた。仙蔵の膝にちょこんと座り、広げられた絵本を目を輝かせて見つめている。



「にーちゃ、よんでー!」


中断された朗読に頬を膨らませて、上目遣いで見上げてくる長次に、仙蔵の顔がふにゃふにゃとだらしなく蕩ける。



「すまないな長次。あの変態アヒルのせいで途中で切ってしまった。」



長次を抱え直して、再び本に目を向けた仙蔵に、留三郎が食らいついた。


「え、ちょっと待て!お前、この間まで長次に嫌われてたじゃねえか!!」



そう、つい最近まで仙蔵は留三郎同様、長次に避けられていた。


「ふん、何のことだ?長次は最初から私になついていたぞ。な、長次?」


白々しく言う仙蔵に留三郎は歯噛みする。ならば、自分も……と長次に手を伸ばすが…………。




「留しゃんいやーっ!!」


全力で拒否された。



「な、何でだよぉ長次ぃいい!」



床に踞り悔しがる留三郎。しかし、悲劇はここでは終わらなかった。





「長次〜、いい子にしてたかぁ?」



「長次、お菓子貰ってきたぞ。」


「長次ー、一緒に遊ぼう!」




小平太、文次郎、伊作の3人が保健室に入ってくると、長次は嬉しそうにテテテッと走り寄った。


きゃっきゃと楽しそうに小平太らに抱きつく長次を見て、留三郎は現在嫌われているのは自分だけなのだと悟った。



「そ、そりゃないぜ…………、長次ぃ〜〜〜。」



ボロボロと涙を流す留三郎は、ショックのあまりトボトボと自室へと帰って行った。






「あれ、留さんどうしたんだろうね。」



「おおかた、長次に相手にされず打ちのめされたってとこだろ。」



伊作と文次郎が留三郎の後ろ姿を見送る。そんな周りの様子に気づいてない小平太は、長次を抱き上げ頬擦りしていた。



「長次ー、今日は何して遊ぶか?委員会も休みだから、思いっきり遊べるぞ〜!!」




「こへたん、あのねー…………。」



「うんうん………………へ?」






もそもそと耳元で呟く長次の言葉に、小平太が微妙な顔をした。













ところ変わって此処は六年の長屋。その一室で、一人の男がふて寝していた。



「…………ん?…………やべ、俺寝てた?」



ごしごしと目を擦り身体を起こそうとしたが、胸元の布が引っ掛かり、できなかった。不思議に思い目を向けると…………。




「は…………えっ?長次!?」



自分に擦り寄るようにして眠っている長次が、ギュウッと服を掴んでいたのだ。




「え、え、え?な、何で……てか、いつの間に?」



軽くパニックになりながら、スヤスヤと眠る長次を見やる。子供特有の高い体温で、胸元がポカポカしている。



「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」



長次のあまりの可愛さに思わず抱きつきそうになったが、すんでのとこで堪える。こんなに幸せそうに眠っているのに、起こしてしまうような行動は避けたかった。




我慢、我慢…………、と己に言い聞かせ、留三郎は腕を伸ばして掛け布団を掴み、長次に掛けてやった。



夕飯までは、まだ時間はある。そう思い留三郎も目を閉じる。しばらくして、二つの寝息だけが部屋に響いた。




















「………………納得いかない。ねぇ、中に突っ込んでいっても良い?」




「ああ。むしろあのアヒルを吊し上げよう。」



部屋の外で中の様子を窺っていた小平太と仙蔵が物騒なことを口にする。それを伊作がやんわりとたしなめた。




「だめだよ、二人とも。これは長次が言い出したことなんだから。」



「うーっ!何で、私と遊ぶより留三郎を選ぶんだよぉー!」







あの時、小平太の耳元で長次はハッキリと言ったのだ。



「あのねー……留しゃんと、ねんねする!」





聞き間違いであってほしかったが、そうはいかなかった。




ギリギリと歯ぎしりする仙蔵と小平太に、今まで黙っていた文次郎が口を開いた。



「長次のことだ。あのアヒルに気を使ったんだろ。どんだけ小さかろうがそうゆうとこは変わんねぇってこった。」



ったく、お人好しなんだよなぁ…………。と、ぼやきながら文次郎は扉に手をかける。慌てて伊作が文次郎の手を掴んだ。



「え、文次郎何やってんの。」



「……あのアヒルに独り占めされるのは癪だからな。俺も一緒に寝る。」




今日は委員会も休みだからな。



ニヤリと笑う文次郎に、伊作も意を決したように頷いた。




「それも、そうだね。」






四人は音もなく戸を開けると、長次を囲むように寝転がる。ニヤケ顔で寝こけている留三郎を殴ってやりたいが、それでは長次が起きてしまう。今は諦めておくことにして、自然と重くなる瞼を閉じた。















〜END〜





お待たせしましたー!

拍手コメよりリク頂いた、3歳長次のほのぼの…………だったん、です、が………………。



大きく逸れましたぁぁああっ!!すみませんぁぁぁぁぁぁあああ!


こんなの違ぇよ!って場合は、思いきり突き返して頂いて結構です(-_-;)


待たせたうえに、こんなできになりましたorzサーセン!






 
 

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