KIRI-REQU
□こんな私を許してね?
1ページ/1ページ
「………………長次、なんか怒ってますか?」
長次が作ってくれたご飯を前にして、俺は顔を引きつらせた。
いや、ご飯を作ってくれた事に関しては、嬉しい。凄く嬉しい。愛しい恋人が自分のために飯を作ってくれるなんて、これ以上の幸せがあろうか。
しかし、問題はその料理だった。
白ご飯の上に大量の納豆が乗った丼に、俺は冷や汗を流す。人には少なからず1つや2つ苦手なものがある。もちろん、俺にも、な。俺にとってのソレが、この納豆だ。
「………………………………別に、怒ってません…………。」
長次が輝かんばかりの笑顔で答える。
いやいやいやいやいや。笑ってんじゃん!めちゃくちゃ怒ってんじゃん!!
とりあえず、その怒りの原因を探るのは後回しにして、問題はこの、目の前の物体だ。ぶっちゃけ納豆の量が多すぎてご飯が見えてない。申し訳程度に振りかけられたネギがなんとも憎らしい…………。
「あ、あのなぁ長次。これはさすがに俺にも食えね…………」
ばきぃっ!!
「っ!!?」
食えねえ、と言おうとした言葉を遮るように破壊音が響いた。見れば長次の手に握られた箸が真っ二つに折れているではないか。
「……………………私の、手料理が、食えないとでも…………?」
怖ぇえええええええーーーーっ!!!
何でそんなに怒ってんだよ。お前は食堂のおばちゃんの化身か!?てか、むしろこれは手料理って言わねぇよっ!!
「………………………………………………。」
「………………………………………………。」
しばらく睨みあっていた俺達だが、観念して食うことにした。長次だって鬼じゃねぇ。俺の健康の為にやってくれてんだろう。納豆には栄養がたっぷり詰まっているらしいからな。………………まぁ、俺からしたら腐った豆にしか見えねぇんだが。
ブルブルと震える手を叱咤し、恐る恐る箸を突き刺す。上に持ち上げると糸を引くコイツらに悪寒が走った。チラリと長次を見やれば、逃がしてたまるかとでも言うように目を光らせている。おい、待てよ。その手に握ってる縄標は何だ?あれか、逃げたらあの世逝きですよってか。
早くしろよ、とでも言いたげな長次の眼光に圧され、とうとうパクリと腐った豆…………もとい、納豆を口にした。
ネチャ…………とした感触と、独特の臭いに卒倒しそうになるが、すんでのところで堪える。だいぶ年下の大好きな恋人にカッコ悪いとこは見せたくねぇ。そんな想いと大人としての意地が俺を踏みとどまらせた。
ゴクリと、喉仏が上下するのを見計らって長次がお茶を差し出す。俺はそれを一気に飲み干して、口の中の嫌な感触を洗い流した。しかし、まだ安心は出来ねぇ。丼の中にはまだまだ大量の納豆たち。くそっ!こいつら、俺を嘲笑ってやがる!
気を新たに箸を運ぼうとしたら長次に止められた。何だ?止めるな長次。俺は今、無数の敵(納豆)と対峙してんだ。目を背けたが最期!コイツらに殺られる!!
しかし、長次の口から出たのは意外な言葉だった。
「……………………少し、意地悪が、過ぎました。…………ほんとは、別のおかずを用意してたんです。」
コトリと置かれた皿には美味しそうな煮物たち。そして、茶碗に盛られた白いご飯。
「………………どうぞ、召し上がれ?」
「いや、しかし…………。」
「その納豆ご飯は、私が食べます。………………先生には、美味しいご飯を食べて欲しいから………………。」
頬を染めて俯く長次に、不覚にも感激した。少し情けないと思いながらも、長次の言葉に甘える事にする。口にした煮物に「美味しい」と呟けば、長次は嬉しそうな顔で微笑んだ。
ご飯を済ませ風呂に入り、あとは寝るだけとなった。柄にもなくドキドキしている自分に苦笑する。久々に長次が泊まっていくんだ。それは、つまり、期待しても良いってことだよな?もう、どれだけお預けをくらったことか…………。
「先生。」
長次に呼ばれ振り替える。風呂上がりの長次は殺人級に色っぽい。ゴクリと唾を飲み込む音が嫌に大きく響いた気がした。
「……………………長次…………っ!」
俺は長次の腕を引き、布団の上にその細い身体を組敷いた。案外余裕の無い自分に笑えてくる。首筋に舌を這わせ吸い付く。ピクリと反応する長次が可愛くて、自分の中心が熱を持ち始めるのを感じた。
「………………ん、はぁっ…………せ、んせ………………。」
口を吸い、舌を絡ませる。息継ぎの合間に漏れる喘ぎ声にますます興奮した。
こいつ、最近ますます色っぽくなったよなぁ…………。教師を辞めてから、当たり前だが一緒に過ごす時間が少なくなった。長次とこんな関係になるって分かってりゃ学園に残ってたってのに。…………いや、そしたら逆にこんな関係になってなかった。だって、離ればなれになって初めて自分の気持ちに気づけたんだから。
長次の着物の裾を割り、内腿を撫で上げる。ピクピクと痙攣する長次が可愛くて仕方ない。充分に硬く勃ち上がった屹立が、早く長次の中に入りたいと痛いほど主張している。
「長次……悪ぃ、久々だから、余裕無ぇ。もう、入れるぞ?」
ヒクヒクと震えている秘孔を緩くなぞり、熱く張りつめた先端を宛がう。そして、一気に奥まで貫く…………
ことは出来なかった。
ガバッといきなり長次が身体を起こし、俺の下から這い出したのだ。その素早さに俺はただただポカーンとすることしか出来ない。
「お、おい、長次…………?」
「先生、すみません。朝子に水やりをしなくてはいけないので帰ります。」
「はぁあっ!!?」
ちょっと待て!お前は恋人との逢瀬より朝顔を取るのかっ!!?
そう思っているうちに長次は着物と袴を履き終え、荷物を背負いだした。慌てて引き留めようとした手をスルリとかわし、戸に手をかける。出ていく寸前に長次が振り返り満面の笑みを向けた。
「それでは、ごきげんよう。」
お前どこの貴族だよ、と突っ込みたくなる挨拶を残し、長次は姿を消した。辺りに気配が無いところをみると、本気で帰ったらしい。
「……………………………………マジかよ。」
こんな…………こんな中途半端に放置されて…………。ビクビクと震える可哀想な分身に哀れみの目を向ける。あんな、お預けをくらうなんて…………あんまりだ。
「あ、あれ?…………目から塩水が…………。」
俺は滝のように溢れ出る塩水を拭いながら、諦めたように長次の残して行った寝間着をオカズに自身を慰めた。
ーーーーーーーー
夜道を駆けていた長次はふと足を止め、杭瀬村の方角を振り返った。
今日は、本当に楽しかった。
あのガサツで強引な大木先生の困り顔見たさに、わざと苦手なものを出したのだ。それは見事に成功して、恐る恐る口に運ぶ表情や飲み込む寸前の今にも泣きそうな顔が見られた。もう少し見ていたかったけれど、二口めから止めたのは、自分の下半身に熱が集まり始めたから。あれ以上見ていたら、きっと理性がもたない気がしたのだ。
そして、極めつけにはあのお預けをくらった時の顔。入れる寸前で放置され、ビクビクと痙攣していた屹立に。あの置き去りにされた子供のような表情に。自分はあろうことか、この上ない幸福感と性的興奮を覚えるのだ。
「………………こんな性癖、異常なのは、わかってる…………でも。」
今は、先生にバレるワケにはいかない。こんな事で嫌われたくない。どうしようもなく愛しているのだ。………………そして、またそれ以上に苛めたいとも…………。
そこまで考えて、長次は小さく困ったように笑った。身体が疼いて仕方ないのは自分も同じこと。だから…………
「今日は、私の置き土産で、勘弁して下さいね………………?」
再び長次は、火照った身体を鎮めるように風を切りながら走り出した。
〜END〜
お待たせ致しました〜!!
大木先生とちょっぴりSな長次の日常でした!
しかし、大木先生がひどい目にあってるだけですな(^q^)今度甘エロ書いたげるから許しておくれ先生。…………たぶんね。
でわ、リクありがとうございました!ちょっと逸れた感が満載ですが貰ってやって下さい(笑)