KIRI-REQU
□ドSより愛を込めて
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「ちょおぉぉぉじぃぃぃぃぃぃっ!!大好きだぁぁぁ!!!」
「………………………………うるさい。」
図書室に響き渡った叫び声に長次は顔をしかめた。
声の主は6年い組の立花仙蔵。普段クールな彼の様子に図書委員の下級生達はビビっている。
「ああ、仙蔵の事は気にするな…………。思考が腐るぞ。」
腰にまとわり付く仙蔵を空気のように扱う長次に、図書委員のメンバーは尊敬の眼差しを向けた。
「うぅー!届かない〜!」
本の整理を再開したメンバー達だったが、怪士丸がうんうん唸って背伸びをしている。どうやら一番上の棚に手が届かないようだ。
「怪士丸…………。無理するな。今、踏み台を用意してやる。」
「中在家先輩…………!ありがとうございます!」
わざわざ自分のために踏み台を用意してくれると言う長次に怪士丸は嬉しくなった。
しかし、長次は座ったまま、パチンッと指を鳴らしただけで立つ気配がない。
意味不明な長次の行動に怪士丸は首を傾げた。すると………………
ズドドドドドドーーーッ!
スパーンッ!!
「呼んだか!?長次ぃぃぃぃぃぃっ!!」
勢い良く図書室に飛び込んで来たのは6年は組の食満留三郎だった。
「けっ、食満先輩っ!?」
怪士丸は訳が分からず目を丸くした。なぜ、指パッチンで食満先輩が来たのか…………?しかも、心なしか、すんごい嬉しそうな顔をしているんだけど。
「………………留三郎。怪士丸の踏み台になれ。」
「ぅえぇええええええーーーーーっ!!?」
長次の発言に怪士丸は叫び声をあげた。
「せ、先輩っ!いくらなんでもそれは…………!って、食満先輩!そんな躊躇いもなくスタンばるの止めて下さい!」
「………………、遠慮するな怪士丸。…………そうか、安定感に不安があるんだな?………………大丈夫だ、こいつは私が乗ってもビクともしないから。………………ほら。」
証明するかのように長次は留三郎の上に立った。
「ほっ、ほらじゃないですよ!なんでわざわざ頭に乗っかるんですかぁーっ!?」
そう、長次が乗ったのは食満の頭だった。しかも、踏みつけられている本人はやたらと嬉しそうな顔をしている。
「さぁ、怪士丸早くしろ…………。作業が進まない…………。」
長次の諭すような声に怪士丸は覚悟を決めて踏み台食満に乗っかった。
(どうしよう…………。食満先輩が中在家先輩を見ながら息を荒くしてる………………。超キモいんだけど……。)
怪士丸は顔の縦線を倍にして作業を再開した。
「ん?中在家先輩!また、潮江先輩の貸し出しカード、期限切れてんスけど。」
きり丸の報告を耳にした瞬間、長次の周りに絶対零度の風が舞った。
「あ、あと七松先輩もです。」
続けて久作の報告にピキピキと長次の額に青筋が浮いた。
「きり丸、久作。よく報告してくれたな…………。少し、出てくるから、作業を進めておいてくれ。」
ポンポンと二人の頭を軽く撫でて長次は図書室を後にした。
「先輩!僕も行きますっ!」
その後を雷蔵が追いかけて行く。
「……………………あの筋肉バカ共が……。毎度毎度世話の焼ける…………っ!」
今日は二人とも鍛練に行ったから裏山あたりにいるかもしれない。そう予想を付けた長次は雷蔵を連れて道を急いだ。
「………………ん?」
鍛練していた小平太が急に後を振り返り首を傾げた。それを見ていた文次郎は不思議に思い小平太に声を掛ける。
「どうしたんだ小平太?」
「うん、今長次の声が聞こえた気がして…………。」
ヒュンッ
「「うわっ!!!?」」
いきなり飛んできた縄標に二人は慌てて飛び退き、避けた。
縄の先を視線で辿ると、雷蔵を引き連れた長次が立っている。
「ちょ、長次!!?危ないじゃないか!」
「長次も鍛練に来たのか?じゃあ、一緒にマラソンしよう!」
驚く文次郎と嬉しそうな小平太に冷めた視線を向け、長次は貸し出しカードを突き付けた。
「本を返せ。」
「「げ。」」
しまった!と顔をしかめる二人に長次は不気味な笑みを浮かべながら縄標を奮う。
「先輩、僕も手伝います!」
雷蔵も二人を捕まえるために足を踏み出したのだが…………。
「っ!!?うわぁあああーーーーーっ!」
足元に張ってある罠に気づかず、足に絡まった縄で木に宙吊りにされてしまった。
「はっはっはー!掛かったな、雷蔵!」
罠を仕掛けた張本人の小平太は高らかに笑っている。
「悪いが、そう簡単に捕まるわけにはいかな…………ぎゃんっ!!」
「こっ、小平太ぁっ!!?」
いきなり吹っ飛んできた鉄球にぶち当たった小平太に、隣にいた文次郎は驚いて球が飛んできた方を見やった。
「………………うちの大事な後輩に何してくれてんだ…………。」
「ち、長次…………っ!」
「大人しく本を差し出せば良いものを…………。貴様らには躾が必要みたいだな…………。」
ニヤリ、と。それはもう極上の笑みを浮かべる長次に鍛練バカ達はこの世の地獄を見たとでも言うような悲鳴を上げた。
「あ、おかえりなさーい。」
ようやく帰ってきた長次の手に数冊の本があるのを見て、無事に取り戻せたんだなと下級生達は安心した。長次の顔が何となくスッキリしたような表情をしているのだが、余りツッコまないでおこう。
「そうだ。中在家先輩、ほんのさっきまで善法寺先輩が待ってたんですけど…………会いました?」
「いや…………。」
見てないと首を振る長次に、図書委員の後輩たちは思わず目頭を押さえた。
(善法寺先輩…………っ、出番がなかった上に、中在家先輩にも会えないなんて………………っ!)
伊作の不運っぷりにホロリと涙が零れるが、当の長次はあまり気にする様子がない。
「伊作の事なら気にするな。その辺で穴にでも落ちてるだろ。」
その直後に、遠くでギャアアアアと保健委員長の悲鳴が聞こえたのだが、あえて図書委員メンバーはスルーした。
「本の整理が終わったら休憩しよう。………………ボーロを焼いてある。」
ほんわりと笑う長次に後輩たちもほわっとなった。さっきまで伊作の不運に同情していたがすぐにぶっ飛び、各々頷いて作業を進めた。
この後の休憩に想いを馳せながら……。
お父さん、お母さん。
今日も図書委員会は平和です。by雷蔵
〜END〜
お待たせ致しました〜(*^^*)
10000hitキリリクで図書委員には愛を6年にはドSを贈る長次でした!
ドS長次にいたぶられる6年を書くのは難しいんですが、意外に楽しかったり(笑)今回、仙蔵は放置プレイです(^q^)
それでは挽歌さん!大変お待たせ致しました!少しでも期待に添えられていたら良いのですが…………(・・;)
キリリクありがとうございました☆