KIRI-REQU

□触らぬ神に祟りなし
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清々しい早朝。六年ろ組の長屋の前に、一つの影。




影の正体は、小平太と長次を朝練に誘いに来た潮江文次郎だ。


深く息をつき、スパーンッと勢いよく戸を開け放った。



「起きろぉおお!!鍛練に行くぞぉおおおっ!!!」



文次郎の雄叫びが部屋を揺るがした。その声に飛び起きたのは意外にも小平太だった。いかにも寝汚い感じなのに意外だな……と思いながら口を開こうとすると小平太の手に塞がれた。



「もがーーーーーっ!!!ぷはっ!何をするんだ小平太!!」


「しーーっ!!静かに!長次が起きちゃうから黙って!!」



小平太の台詞に文次郎は首を傾げた。


「なぜだ?良いじゃないか。俺はお前達を起こしに来たんだからな。さ、鍛練に行こう!!」


「ちょっ!!?だから、静かにって……!」



「………………うるせぇ。」




「っ!!!?」




背後から聞こえた呟きに小平太は青ざめた。………今、うるせぇって、言ったよな?ヤバい。久々にきてしまった!!



冷や汗を流す小平太をお構い無しに文次郎は長次に声をかけた。



「遅いぞ長次!さぁ、3人で鍛練に行こうじゃないか!!」



「チッ……ギンギンギンギンうるせぇんだよ。やりたきゃ一人でやって来い。」



文次郎は固まってしまった。長次が、舌打ちした………。いや、それよりも……いつもより目が据わってるし、言葉遣いも悪くないか?


文次郎は我に返ると、とりあえず口を開いた。


「いや、ギンギンは言ってな「うるさい黙れゴキブリ野郎。」……………ハイ。」



余りにも一方的に言われてる文次郎が憐れで、小平太は助け舟のつもりで口を開いた。



「長次、いくらなんでも言い過g「あ゙?」ごめんなさい!!!」



まるで腐った蜜柑を見るような目で睨まれ、小平太は引き下がった。ドMの留三郎なら喜ぶだろうが、自分にとってはかなりのダメージだ。


ましてや想いを寄せている相手ともなると、死にたくなるレベル……。



「長次……あの、鍛練に………。」


「だから、何で私なんだ。クラスだって違うのに。お前、友達いないのか?」


長次の言葉に深く胸を刔られた文次郎はその場に膝をついて頭を抱えた。しかし………




「そんな所に蹲るな。邪魔になるだろうが。」


「すみませんでしたっ!!」



普段の長次からは予想も出来ない発言の数々に文次郎は怯えきっていた。








あれ…………?




「小平太、小平太!!」


文次郎はふと疑問に思い、小平太を小声で読んだ?


「何だ?」


「長次、何か、いつもと違うのだが………。」


「今更!?…………もー……。長次、寝起きめちゃくちゃ悪いんだよ。おまけに昨夜は図書室の整理で寝るの遅かったから………。」




なるほど。そこに俺が起こしに来てしまったからキレてるのか………。



いつも大人しい長次の、意外な一面を見てしまい、文次郎は感動に似た気持ちが込み上げてきた。好きな人の新たな一面を知れるのは嬉しいことだ。



「そうか、ならば長次。もう少し寝てると良い。今日は休みだしな。」


文次郎は長次に笑いかけた。もう一度寝てしまえば、長次の機嫌も治るだろう。





「は?今更寝れるわけねぇだろ。てめぇを永眠させてやろうか?」


しかし長次から返ってきたのは、えらくドスの効いた脅し文句だった。



「ちょ、長次……っ!!俺のこと嫌いか!?嫌いなのかっ!!?」



文次郎はみっともなく長次に縋り付いた。




「いや……、今の無様な格好はわりと好き…………。」




「…………!!そうか、長次は無様な男が好きなんだな!?ならば、今からギンギンに鍛練して無様で滑稽な醜い豚野郎になってみせるぞぉぉおおおっ!!!!」




「えっ!?ちょ、待っ……!!!文次郎ぉおおおおおっ!!」



小平太の制止も聞かず、文次郎は走り出してしまった。



一人取り残された小平太はため息をつき長次を振り返った。


「長次、言いs「「ずるいぞ長次ぃ!!俺(私)も詰ってくれぇええっ!!!」」



しかし、長次を嗜めようとした言葉は2人の変態に遮られる。






 
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