KIRI-REQU

□中在家長次のとある一日
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「おはよう長次。」


朝、目を覚ますと、自分の布団の中に仙蔵が入り込んでいた。毎日毎日、よくもまあ………と長次はため息をついた。


「…………出ていけ、仙蔵。」


「つれないな長次。熱い夜を一緒に過ごした仲じゃないか。」


仙蔵はこんなことを言っているが、一度たりともそんな仲になったことなどない。




「仙蔵、お前はどれだけ私に付き纏えば気が済むんだ。いい加減にしてくれ………というか、むしろ消滅しろ。



長次から吐かれた暴言に仙蔵はピッキーンと固まった。




そんな仙蔵をよそに、長次は起き上がりグッと伸びをした。


「さて、今日も長い一日が始まるな。」




















朝ご飯を摂ろうと食堂へ赴くと、先に来ていた伊作と留三郎に手招きされた。


「おはよう、長次。」


「ああ。………伊作、何をしているんだ?」


机の下に潜り込んでいる伊作に声をかけると、何かを指で摘んで這い出してきた。


「うん。下にもやしを落としちゃって………。」


「そんなの、後で拾えば良いのに………。行儀悪いぞ……。…………………、そのもやし、萎びて薄汚れて可哀相なことになってるな。まるで伊作、お前みたいだな。



「…………………エ?(゜∇゜)」


ピッキーンと固まる伊作をよそに長次は吸い物を啜った。



ふと視線を感じ、目を向けると留三郎と目が合った。…………何でそんな興奮した目で見るんだ。……………ああ、そうか。留三郎はドMだからな。今の台詞に感じたのか。



「………………留三郎、キモいからそんなに荒い息するな。むしろ、地球上の貴重な酸素が勿体ないから息しないでくれるか?



素っ気なく言い放ち留三郎を見ると、案の定喜んでいた。長次は小さく舌打ちすると、ご飯を食べ終え食堂から出ていく。





「さて、授業の準備をしないとな………。」














この日の実技は5年ろ組との合同授業だった。



「………………離れてくれないか鉢屋。」


授業が始まるなりベタベタと引っ付く鉢屋に長次は舌打ちした。


「………………、先輩ってばため息通り越して舌打ちしないでくださいよ。傷つくなぁ。」



「……………ウザい、キモい、大嫌い。鉢屋も仙蔵と一緒に視界から消滅してしまえば良いのに………。




ピッキーンと固まった鉢屋の腕から逃れ、雷蔵のもとへと向かった。


「あ、中在家先輩。今日は良い天気ですねぇ。お昼寝日和ですねぇ。どうですか?授業なんてサボってそこの草むらでエッ「死ねば?」…………。」



ピッキーンと固まる雷蔵を尻目に長次は授業へと戻った。




「あっ!中在家先輩、良かったら俺と組みませんか?」



後ろを振り返ると、竹谷が長次の手を握っていた。


「なんだ竹谷か。カメムシかと思った。



ピッキーンと固まる竹谷を(以下略)




「この授業が終わったら昼休みだな………。」


長次はお昼ご飯に思いを馳せながら授業にもどった。
















「おっ、長次お疲れー!」


食堂に行くと、仙蔵と文次郎が手招きしていた。



「……………仙蔵、消滅しなかったのか………。」


ボソリと呟いた長次に仙蔵はみそ汁を喉に詰まらせ、むせ返った。


「ゲッホ、ゴホッ……………残念だったな長次!私は長次をモノにするまでは消滅しないぞ!!」


フフンと鼻で笑う仙蔵を長次は一瞥し、みそ汁を啜った。具を箸でつまみ、ふと仙蔵に目を向けた。


まじまじと見つめられ、仙蔵は首を傾げた。


「仙蔵は、コレみたいだな。」


「これって………えのき?」



仙蔵は、箸で摘まれたえのきと長次を交互に見た。


「仙蔵は、色白で細くて……………、」



いきなり褒め言葉?らしきものを長次に言われ、仙蔵は頬を赤らめた。長次に褒められるのは嬉しいらしい。




「………ひょろひょろしてるくせに、なかなかしぶとくてムカつく……まるで一本だけ刈り損ねたえのきみたいだな。あとは、捨てられるだけの………。」



仙蔵は再び固まり文次郎は茶を吹き出した。


「文次郎きたない………。」


「いや……でも、さっきのは言い過ぎじゃないか?」


うるさいゴキブリ野郎。害虫が人間の言葉を喋るな。



「(゜∇゜)ポッカーン」



もくもくと食事を再開した長次に2人はフルフルと奮えだした。



「「長次のバカヤロー!!でも好きだぁあああああっ!!」」



泣き叫びながら食堂を出ていく2人をよそに長次は食事を済まし、


「おばちゃん、あの2人、お残しして行きました。」


「ぬゎあんですってぇえええっ!!!」





数分後、仙蔵と文次郎の悲鳴と、お玉で殴られる音が鳴り響いた。











 
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