anniversary☆book
□僕たち結婚しました!
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「俺たち、結婚しましたー!」
「……………………は?」
職員室の戸を開け放つなり高らかに宣言するのは、昨年この忍術学園を卒業した摂津のきり丸。
そして、その隣に立っているのはきり丸が1年生の時に同じ委員会の先輩だった中在家長次だ。
土井先生と山田先生は、長次よりも背が高くなったきり丸を見て、時の流れは早いな……なんて感傷に浸っていた。
って、いやいやいやいや。
「何言ってんだお前?」
一足早く我に返ったのは半助の方だった。額に青筋が浮いてるのは気のせいか。
「何って…………。だからぁ、俺たち結婚し「シャラァアアアップ!!!!」…………………………(頭は)大丈夫っスか?土井先生。」
「大丈夫なわけないだろ?何でだ?いつの間にそんな関係になってたんだ?そんなフラグ、1ミクロンも無かったろ!?」
きり丸の肩を掴み黒い笑みを見せる半助に、長次がおずおずと口を開いた。
「……………………すみません、土井先生。先生の大切なきり丸をとってしまって………………。」
「!?ち、違っ……!なぜそうなる!私が大切にしてたのは長次のほ「はいっ
アウトーーーーー!!」グハァッ!!」
きり丸のアッパーをくらい、半助が吹っ飛んでいく。
「土井先生ー、やぁっと俺が口説き落としたんスよ?横やり入れんの止めてもらえます?」
にぃっこり笑うきり丸と半助の間に火花が散った。
「こらこら。二人とも落ち着かんか。………………で、どうしてそんな経緯になったんだ?」
きり丸と半助を宥めつつ、気になっていたことを訊ねる山田先生に、長次ときり丸は顔を見合わせた。
「別に、急に決まった話でもないんスよ。だって俺たち付き合って2年は経ってますから。」
「えぇっ!?」
これには山田先生も驚いた。と、言うことはきり丸が五年生の時にはもう付き合っていたということになる。
「ほら、四年生の時にオオマガドキ城の合戦に実技の授業で潜入したじゃないですか。その時に、偶然再会したんス。ねー、長次さん!」
「ねーじゃない…………。あの時は驚いたぞ。………………私が来なかったら、きり丸はかすり傷ではすまないところだったんだからな…………。」
能天気なきり丸に長次は不機嫌そうに呟いた。
「反省してますって!もー、俺があんな所で死ぬわけないっしょ?なんたって、"歴代最強のは組"なんだから。」
そう、きり丸たちのクラスは事件に巻き込まれたり、巻き起こしたりするうちに実践経験を積み、四年生の頃には既に忍術学園最強の肩書を手にしていた。
「でも、長次さんってば俺のこと気づいてなかったよね。俺はすぐに分かったのに。」
あの時、目の前の敵に集中しすぎて背後を疎かにしてしまった。今ならそんな失態は皆無なのだが…………。
後ろから斬りかかってくる足軽に気づくのが一瞬遅れた。傷を負うのを覚悟で苦無を構え直した、その時。
ヒュンッと顔の横を風が走ったと思えば、足軽の刀が弾き飛ばされていた。足軽の腕に突き刺さっているのは縄で繋がれた刃物で…………。きり丸はそれに見覚えがあった。一緒に過ごしたのはたったの一年間だったけれど、一瞬たりとも忘れたことはない。
恋しくて恋しくて、ずっと忘れられなかった人が持っていたのと同じ物。
まさか、と思い振り返るとそこには、頭巾で顔を覆ってはいるが見間違えるはずがない。会いたくて堪らなかった人。
「中在家、先輩?」
「っ!?」
いきなり名前を呼ばれ長次は驚いた。間一髪のところで助けた自軍の足軽をマジマジと見つめた。
自分の軍の旗と装束を身につけてはいるが、その顔には見覚えがない。……………………いや、待てよ…………。このつり目と八重歯が印象的な顔を、ずっと昔に見た気がする。
でも、この顔で一致し尚且つ自分を先輩と呼ぶヤツなんて一人しか知らない。
「……………………………………きり丸、か?」
「そうっス!先輩が六年生の時に世話になってました、きり丸です!」
「………………分からなかった…………。背が、だいぶ延びたな。…………髪も。」
「先輩は変わんないですね。でも、ちょっと縮みました?」
長次はイタズラっぽく笑うきり丸の頭を軽く小突いた。
「ばか。…………お前が大きくなったんだ。」
「へへへっ!ねぇ、先輩。」
カッキーン!!
きり丸が長次の背後に向けて苦無を放った。長次に斬りかかってきた足軽の刀を弾いたのだ。驚く足軽を、長次はすかさず蹴り飛ばす。
「油断大敵っスよ。…………てか、落ち着いて話したいんで、ちょっとだけ共同戦線張りません?」
「……………………しょうがない、な。」
そして二人は周りの敵を一通り凪ぎ払い、時間が許す限り語りあった……。
「ってな感じで再会したんですよ。俺ら。」
「だいぶ成長してたから、気づかなかった。」
「かっこよくなってたっしょ?」
にししっと笑うきり丸に、すぐ調子に乗る…………と、長次は溜め息をつく。
「で、そのあと付き合いだした、と。………………全然気づかなかった…………っ!」
未だにくやしそうにする半助にきり丸は苦笑した。
「でも、俺も口説き落とすのに丸1年かかったんスよ?」
「「えぇえっ!!?」」
丸1年、と聞いた山田先生と半助は驚いた。あのきり丸が、金がらみ以外でそこまでねばるなんて…………。聞けば、毎日毎日休む間もなく長次を追いかけ口説いていたらしい。
「………………私の、負けだな。」
半助がポツリと呟いた。
それほど、衝撃だった。一緒に住んでいたから良くわかる。きり丸が金に執着していた事と、金が絡まない事には無関心なところ。人付き合いなんて、金が懸かるからと最低限の人間としか親しくならなかったこの子を、ここまで変えさせたのは紛れもなく長次の存在だろう。
それに、こんなに幸せそうに笑っている元教え子たちに野暮なことは言えない。
「きり丸、長次。お幸せに。」
山田先生が二人の頭に手をおき、くしゃりと撫でる。
「……………………大切に、してやるんだぞ。」
もし、泣かすようなことがあれば………………と、半助がきり丸に真剣な眼差しを向ける。
「わーかってますって!安心してくださいよ、1年かけて口説き落としたんですよ?今更、手放すわけない。」
きり丸が長次の手を握りしめた。
「ねぇ、先生。いつだったか、先生に金と命とどっちが大切なんだって聞かれて、金って即答した事がありましたよね?」
半助は頷いた。きり丸が1年の頃の事だが未だに良く覚えている。
「でも、今は迷わず命って、答えますよ。だって、一瞬でも永く、長次さんと生きていきたいから。」
「きり丸………………。」
半助は、溢れる涙を誤魔化すように、乱暴に袖口で目を擦った。山田先生の目にもうっすらと涙の膜が張っている。
長次ときり丸は顔を見合せ、嬉しそうに微笑みあった。
学園長や他の先生方にも一通り報告し終えた二人は、手を繋ぎ帰路についていた。
遅いから泊まっていけと学園長たちにも言われたのだが、やはり新婚なのだ。二人きりになりたい。………………気持ちはとても有り難かった。本当に。
「きり丸…………。私もだ。」
「へ?」
不意に呟かれた言葉にきり丸は首を傾げた。
「……………………私も、一瞬でも永く、お前の側で生きていきたい。」
「長次さん………………。」
きり丸は、長次の手を引き抱き締めた。スッポリと腕の中に収まる愛しい人を、絶対に幸せにしてみせる。
背中に回される腕にきり丸は幸せいっぱいだと笑う。
「長次さん。家に帰ったら、たぁっぷり、子作りしましょうね?」
イタズラっぽく笑いながら言うきり丸に、長次は真っ赤になって、バカ……と呟いた。
〜END〜
お待たせ致しました!
第4位を勝ち取った下級生×長次で、きり長でした!
ぶっちゃけ、まさかこんなに上位にくるとは思っておりませんでした(笑)
ラブラブなきり長に…………したつもりなんですがいかがでしょうか?大丈夫かな(*´ω`*)しかし、このカプも書いてて楽しかったです!
さてさて、次のページはおまけなんですが、18禁的おまけになります。
二人の子作りの話なので(笑)
大丈夫な人のみお進みください☆