NOVEL

□近くて、遠い
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ニョタ長(元拍手文・閲覧注意)













「お願い、許して………………。」




長次は涙で濡れた目を、目の前の上司に向けた。





ここは、タソガレドキ城の地下牢。



裏切り者や間者を放り込む為の強固な牢屋に長次は繋がれていた。






「私、何も、話してない…………。小平太達とは、たまたま会って…………昔のこと、話してただけ。この城の機密は流してない!……………………お願い、信じて、組頭。」




長次達が忍術学園を卒業して、5年が経つ。皆それぞれ各地の城に就職が決まり、長次もまた、このタソガレドキ忍軍に採用されていた。





たまたま、任務先で小平太に再会し、近くにいるという他のメンバーも呼び出してくれた。かれこれ5年ぶりの再会に話が弾み、長次も時が経つのを忘れ昔話に華を咲かせた。



しかし、そこへ長次の様子を見にきた忍組頭・雑渡昆奈門が来てしまったのだ。旧友と言えど他国の忍。一緒にいるところを見られては怪しまれても仕方ない。


問答無用で長次を抱き抱え城へ帰った雑渡は、そのまま地下牢へ向かい、彼女を牢屋の中に放り込んだ。



「別に、そんな事で怒ってるわけじゃないよ。君の口の固さは私が一番良く知ってる。」



長次の前にしゃがみこみ、雑渡は呟いた。



「私が許せないのは、君が私以外の男と楽しそうにしてたからだよ。」




雑渡の言葉に長次は目を見開いた。



「どうして、そんなことくらいで。って、思ってるだろう?」



図星をつかれ、たじろぐ長次に雑渡は嗜虐心を煽られる。




「久々に、お仕置きしてあげようか?長次。」



長次はビクリと竦み上がった。雑渡が自分を呼び捨てにするときは、かなり本気で怒ってる証拠だ。



長次は絶望感に涙を溢した。



どうして、


私は



この人から逃げられない?











グイッと縄を引き寄せられ、雑渡の腕に包まれた。




「今夜は、泣き叫んだって、許してあげない。」




耳元で囁かれた低い声に長次は背筋を凍らせ、諦めたように目を閉じた。





























疲れ果て、気絶するように眠ってしまった長次の頭を撫でながら雑渡は深い息をついた。



少し、ムキになりすぎただろうか。



学園卒業と共に長次をしつこいくらいにスカウトしてウチの忍軍に来てもらった。



ずっと前から気になっていた子だったし、腕も確かだったから諦めるつもりは毛頭なかったけれど。



しかし、上司と部下の間柄になってから、彼女の態度が変わった。今まで雑渡さんと呼んでくれていたのが、いつの間にか組頭になっていて。接し方もよそよそしいモノになった。前みたいに接してくれて良いと何度も言ったのに、頑として聞き入れてくれなかった。







昼間、旧友と楽しそうに話す長次を見て、嫉妬に狂いそうになった。私には見せなくなった笑顔を、他の男に向ける長次に怒りが爆発した。









「お願い、長次くん。私を見て…………。」




組頭としてではなく、一人の男として。











タソガレドキ忍軍に来てくれてから、ほぼ毎日のように会えるようになった。


でも……………………






近くにいるのに、手を伸ばせばすぐ触れられる距離にいるのに………………なのに、今はこんなにも君の心が遠い。











end




監禁ニョタ長と見せかけての雑長でした。(笑)



切ない話を目指した結果、微妙な出来になりました。イラストも………………すみません!お見苦しいモノをお見せしました(´д`|||)



















 

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