NOVEL

□ばんがい に
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3歳児長次番外編(元拍手文)







ここは忍術学園の食堂。


皆授業中で長次の面倒を見れないため、長次は今、食堂のおばちゃんに預けられていた。




「あら、お利口さんねぇ中在家くん。お残ししないで全部食べれたね。えらいえらい。」



おばちゃんに頭を撫でられて長次は嬉しそうに笑った。



「あい!ごちしょーしゃまでちたっ!」



上手く喋れないながらも、一生懸命ごちそうさまをする長次に食堂のおばちゃんは顔を綻ばせた。




「美味しかったかい?」



「あい!」




幼児の食べる物なんて久しぶりに作ったのだが、長次の口に合ったようでホッと息を吐く。





「じゃあ、ご褒美に。コレをあげようかね。」




おばちゃんが長次に差し出したのはウサギのぬいぐるみだった。たまたま図書室で南蛮の書物の中に作り方が載っているのを発見して、早速作ってみたのだ。



在り合わせの布で作ったものなので、本物のウサギとは程遠いのだが………………。







「っ!!うしゃぎしゃん!!」




しかし、長次は目を輝かせてぬいぐるみを抱きしめた。気に入ったようだ。





その時、ちょうど終業の鐘が鳴り響いた。






「あら、もうこんな時間!ご飯の準備しなくちゃ!」




慌ただしく釜戸に向かうおばちゃんに、長次はしゅん……となったが、ちょうど廊下を歩く人影に気づき、トテトテと走り出した。















「あ"ーーーー!暑い!汗かいた〜。」





「夕食まで時間あるから風呂入ろ。」






実技の授業を終え汗だくで戻ってきたのは5年生達だった。今日は、いろは全クラス合同だったので、いつものメンバーが揃っている。




「そういえばさぁ、聞いた?中在家先輩の噂。小さくなったって聞いたけど。」



尾浜が思い出したように話題をふった。



しかし、全員が首を横に振る。




「あれ、雷蔵もまだなの?同じ委員会なのに。」



久々知の言葉に雷蔵は頷く。


「さすがに委員会活動は出来ないらしくて。それに、6年生のガードが固くて近寄れないって。」





そう、タソガレドキ忍組頭に拐われてからと言うものの6年生はもちろん教師陣も目を光らせているから、迂闊に近寄れないのだ。


あの時の騒ぎは凄かった。長次を連れて帰ってきた利吉が神のように崇め奉られていたのが記憶に新しい。






「でも、中在家先輩の小さい頃って想像出来ないよなぁ。だって俺達が入学してきた頃には既にあの無表情だったし!」




アハハハと鉢屋が笑う。



「三郎、中在家先輩を馬鹿にしたね?」



「っ!?し、してない!これっぽっちも!!」






急に低くなった雷蔵の声に鉢屋はびくついて全否定する。




「相変わらず、雷蔵は中在家先輩の信者だな………………っ!!?うわぁっ!?」




「どうしたの八っちゃん!!?」




いきなり叫び声をあげた竹谷に皆が振り返った。




「いや、何か足を掴まれて……………………………………え?」





足元をみた竹谷は目を見開いた。小さな子供が袴をギュッと握りしめていたのだ。






(うわ…………可愛い。)




何となく小動物を思わせる雰囲気に竹谷は胸をわしづかみされた気分になった。





「…………にーちゃ、あしょんでくらしゃい!」












おっきなクリクリとした目で見つめられて、竹谷は完全に落ちた。





「あれ………………、その子、もしかして中在家先輩じゃないか?」



「「「「えぇえっ!!?」」」」





久々知の言葉に皆が目をむき子供に目を向けた。確かに、あの頬の傷は見覚えがある。





雷蔵は子供の目線にしゃがみこんで恐る恐る話しかけた。



「中在家…………先輩、なんですか?」




「あい!なかざいけ、ちょーじれす!」




ウサギのぬいぐるみをギュウウと抱きしめながら自己紹介する長次に残りの四人もノックアウトされた。






普段の長次からは考えられないくらいニコニコしてて、可愛い。





遊んでくれるの?ダメなの?と不安げに見上げる仕草が可愛すぎてしょうがない!







「いいよ♪でも、お兄さん達今からお風呂入るんだ。……………………一緒に入る?」




すごく、何か企んだような笑みを浮かべて鉢屋が長次を抱き上げた。





長次は分かっているのかいないのか、こくこくと嬉しそうに頷いている。





「よし!それじゃ、レッツゴー!」



「ごー!」



きゃっきゃ笑いながら鉢屋の真似をする長次にキュンキュンしながら、一行は風呂場へ向かった。





風呂は3歳長次には深すぎて、誰かが抱っこしたまま入らなくてはならなくなり、その役目を誰がするかで修羅場になるのだが、それはまた別の機会に…………。








end











もっと幼児を可愛く描けるようになりたい。














 
 

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