NOVEL
□小人の長次と雷蔵
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ここは、妖精の国。小人達が暮らす平和な国である。
この国の片隅、都会から離れた緑豊かな森に長次と雷蔵という二人の小人が仲睦まじく暮らしていた。
「せんぱーい!森にたくさんの果物が実りましたよ!見てください!」
山菜摘みに行っていた雷蔵が、息を弾ませて長次のもとへと駆けてくる。キッチンでお菓子を作っていた長次は、雷蔵に手を引かれ裏庭へと向かった。
「………………っ!これは…………すごいな。」
「でしょう?人間界から持ち帰った苗が、やっと実ったんですよ!」
目をキラキラと輝かせる雷蔵に、長次はためらいがちに口を開いた。
「……………………しかし、これは………………大きすぎないか?」
そりゃそうだ。人間界から持ってきたものなのだから。小人の二人よりも遥かに大きな果実に長次は困惑した。
「サイズはさすがに変えれませんからね。僕たち魔法が使える訳でもないですし。」
「……うむ。…………しかし、これだけの大きさと量だ。食べきる前に腐らせてしまうぞ…………。」
首を傾げながらうんうんと唸っていたが、良い案が浮かんだのかほぼ同時に二人は手を打った。
「「街の小人さん達にも分けてあげよう!」」
二人は力を合わせて熟した果実を摘み、荷車へと乗せていく。山谷の少ない道程で、さほど苦労することなく街へと着き、集まってきた小人さん達に果物を分け与えた。
見たこともない食べ物に小人さん達は驚き、そして嬉しそうに家へと持って帰っていく。たくさんの笑顔と「ありがとう」の言葉に長次と雷蔵も顔を見合わせて微笑みあった。
空になった荷車を押しながら、二人はやっとのことで家へと着いた。
「せんぱい。僕たちも食べましょう!」
おやつもそこそこに街へと出た二人はお腹ペコペコ。切り分けるためのナイフを持って裏庭へと向かった。
「せんぱい!僕、あの紫色の丸いのを食べたいです!」
たくさんの丸い粒々が房になった果物を、プチっと雷蔵がちぎる。長次も真っ赤で黄色い種がついた果物を持って、芝生に座った。
「………………いただきます。」
「いただきまーす!!」
カプリ
「わわっ!おいしー!あれ、これ中身は緑色なんだー。せんぱい、そっちはどうですか?」
「………………甘い…………美味しい。」
もきゅもきゅと両手いっぱいの果実にかぶりつく長次は、とても幸せそうな顔をしていて、長次のことが大好きな雷蔵はそれだけで幸せいっぱいだった。
「せんぱい、こっちのも美味しいですよ。一口どうですか?」
「……………………食べる。」
カプリ……
「………………美味しい…………。ゼリーに入れても良いな。」
「あ、いいですねぇ!なら、そっちのはどうですか?」
「これは、ジャムにしてみると…………良いかもしれない……。」
お菓子作りが大好きな長次のワクワクしている顔に、雷蔵もニッコリと微笑む。
こんな幸せな日が、いつまでも続きますように……。
小さな願いを胸に、雷蔵は長次の隣に寄り添って甘酸っぱい果実を頬張るのだった。
ーENDー
拍手ありがとうございます!
ちょっと微妙な出来になってしまいましたね……(^_^;)
二万打記念アンケで、惜しくもランクインできなかった雷長……。しかし、ほのぼのな雷長でコメが入ってましたので、ここで使わせていただきました!
しかし、ほのぼの……かな?f(^_^;