NOVEL

□ばんがい
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留三郎と仙蔵には、どうしても納得のいかない事があった。


「どうして長次は」


「私達に寄り付こうとしない?」



そう、文次郎・伊作・小平太には自分から寄っていくのに、何故か留三郎と仙蔵は避けられているのだ。




「さぁ…………、あ、でも仙蔵はこの前のが原因だと思う。」



長次を膝に抱っこしながら伊作が思い当たることを話した。



















そう、あれはちょうど10日ほど前。



仙蔵はお使いのご褒美にと、食堂のおばちゃんからミカンをもらった。瑞々しくて、とても甘そうなミカンだった。


「後で文次郎に剥かせよう。」


ミカンは好きだが、汁で手がベタつくのが難点だ。仙蔵は部屋に戻ると机にミカンを置き、借りた本を読もうと手を伸ばした。その時、




ガラッ



突然戸が開き、ヒョコッと長次が顔を覗かせた。仙蔵は嬉しい訪問者に思わず笑顔になる。


「どうした、長次。」


キョロキョロと部屋を見渡していた長次はおずおずと中に入り、仙蔵の所にトコトコとよって来た。


「遊んでほしいのか?」


頭を撫でてやりながら、問いかけると長次はこくりと頷く。他のメンバーは委員会やらで出払っているのだろう。きっと、独りぼっちで寂しかったに違いない。



「いいぞ。私が遊んでやろう。…………そうだ、長次ミカン食べるか?」



長次の前にミカンを差し出すと、目を輝かせて頷いた。


「ふふっ、なら私が剥いてやる。」


「あい!」


ワクワクしながら待っている長次が可愛らしくて、仙蔵は思わず笑みが溢れる。案の定、汁で手がベタベタになるが、そんなの気にならない。



剥き終わり筋を丁寧に取り払い、1つ長次の口許に持っていく。


「ほら、あーん。」


仙蔵の言葉に、長次が小さな口をあーと開ける。ミカンを口に入れようと口を閉じた。が、




ひょいっ




口を閉じる寸前、仙蔵が手を引き食べられなかったのだ。


キョトンとする長次の顔に仙蔵は悶えた。仙蔵は留三郎と同じ変態だが、二人には決定的に違うところがあった。留三郎はドM寄りの変態なのに対し、仙蔵はドS寄りの変態だったのだ。



長次は気を取り直し、一歩進んでミカンを口に入れようとするが、またもやひょいっとお預けをくらってしまう。



仙蔵はそんな長次が可愛らしくて、食べようとする長次からミカンを遠ざける。


一歩、また一歩とミカンを追いかけ長次はだんだんと仙蔵に近づいていく。



それを5回ほど繰り返した頃、仙蔵の手はこれ以上は遠ざけられないだろうと言うところまできていた。それも長次は分かるのだろう、やっと食べられると思い意気揚々とミカンに口を寄せる。………………が、




ひょいっ



「……………………………………っ!」



今度は上に逃げたミカンに、長次はとうとう泣き出した。わんわんと泣く長次に仙蔵はさすがにやりすぎたと焦る。手を伸ばすが、それを長次に叩かれた。




「にーちゃ、の、ばかぁ!きあい!あっちけーっ!」



キライ、あっちに行けと言われ、仙蔵はショックで固まった。



「長次!?どうしたの!」


たまたま側を通りかかったのだろう。トイペを抱えた伊作が部屋に飛び込んできた。そして、青い顔で固まる仙蔵と、綺麗に剥かれたミカンを見て全てを察したのだろう。仙蔵の手からミカンを奪い、長次の口許に持って行ってやる。




「ほら、長次。これが欲しかったんだよね。あーんして?」



グズグズと泣きながら長次は伊作を見た。ソロリと近づき口を開ける。今度は逃げられないように小さな両手でギュッと伊作の手を握って。




ぱくっ……もぐもぐ…………ごくんっ



やっと食べることのできたミカンの美味しさに長次の顔が綻んだ。



「美味しかった?長次。」



こくりと頷く長次に残りのミカンを手渡し、伊作は長次を抱き上げた。



「そろそろ皆が帰ってくる頃だから、それまで保健室で遊ぼうか?乱太郎たちも喜ぶよ。」



あい!と嬉しそうに頷く長次を連れて伊作は部屋を出た。未だ固まったままの仙蔵を残して………………。


























「そ、そういえばそんな事が、あったな…………。」


思い出してガックリと肩を落とす仙蔵。後悔しても今更遅い。



「でも、仕方ないじゃないか。あの長次の困った顔は股間に………………いや、何でもないですすみませんでした。」




股間と言った瞬間、伊作と小平太・文次郎、そして何故か天井から殺気が放たれ仙蔵は黙った。




「あのさ、なら俺は何で避けられてるんだ?嫌われるような事した記憶はないんだが。」



留三郎の言葉に仙蔵以外の3人が顔を見合わせる。



「たぶん、留さんから滲み出る変態臭を嗅ぎ分けてるんだよ。」


「本能で危険を察知してるんだな。偉いぞ長次ー♪」


「はっ!ざまあみろ。」







「お前らひでぇな!てか、何で俺だけ容赦なくボコ!?」











〜END〜



どうして留三郎と仙蔵が嫌われてるか書きたかっただけの番外編ですすみません(^q^)


仙蔵は好きな相手には意地悪しそうだなって思ったんです。まぁ、夜はねちっこく攻めそうですけどね(^^)b



天井裏で盗み聞きしていたのは誰か…………、それは皆様の想像にお任せいたします(笑)




 
 

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