NOVEL

□ろく
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タソガレドキ城から無事に帰ってきた長次は元気に過ごしていた。





「にーちゃ、あしょぼー!」と言う長次の可愛いお願いに意気揚々と遊び始めた6年の面々だったが………………。















「おじちゃー!だっこ!!」


「お、おじちゃ、ん………………って。」



ニコニコ笑いながら手を伸ばす長次に、文次郎は複雑な気分になる。



「ふふん!ざまあ、文次郎!!」


「徹夜明けの酷い顔がたたったな。」


爆笑する留三郎と仙蔵に、しかし文次郎は勝ち誇った笑みを寄越す。



「はっ!長次に拒否られてるテメェらに言われても、痛くも痒くもねぇな!」



「「ぅぐ!!」」



そう、何故か長次は仙蔵と留三郎には寄り付こうとはしなかったのだ。



「な、何でだ長次…………!?ほら、飴あげるから、こっちおいで!」



「やぁーーーーーーっ!!」



伸ばした手をペチペチ叩かれても痛くはない。だが、心に大きな傷を負った。特に、子ども大好きな留三郎の落ち込みようは半端無かった。




「うっ、うぐぅ〜…………っ!ちょ、長次ぃぃ〜…………。」



みっともなく床に撃沈し、顔から出るもの全て出ている留三郎は、周りの視線など気にせず泣きじゃくっている。



仙蔵・文次郎がドン引きするなか、長次は「自分のせいで泣いている」と言うのが分かるのだろう。少しばかり、幼心に罪悪感がわいた。



長次は文次郎から離れ、てちてちと留三郎に歩みより…………。



「とめしゃん、ないちゃ、やぁー。」



ポンポンと頭を撫でる長次に留三郎の目が光った。



「長次ぃぃぃぃいっ!!」


あまりの可愛さに抱き締めようと腕を広げた留三郎だったが…………。











「いけいけどんどーーーーーーん!」




ドゴォッ!!!



「ぅ"おっふぅ!!!!」




猛烈な勢いでいけどんアッパーをくらった留三郎は天井に突き刺さった。




「わーどうしたんだとめさぶろうてんじょうにぶらさがってー。」




わざとらしい棒読みで小平太がやってきた。後ろには伊作もいる。



「ダメだよ長次。あのお兄さん達は変な人だから。近づいちゃ、めーだよ?」



「あい、いしゃくにーちゃ!」




大人しく抱っこされる長次を見て、仙蔵が歯噛みした。



「な、何故伊作にはあんなに従順なんだ…………っ!というか、名前呼び!?」





「私の名前も呼んでくれるぞ?な、長次!」




「あい!こへたん!!」



舌足らずな名前呼びに仙蔵はキュンとなった。ただ、呼ばれたのが自分の名前じゃないのがくやしい。



「ちゃんと教えたら覚えてくれるよ?長次はおりこうさんだもんねー?」



「じゃあ、留三郎も…………?」




文次郎が伊作に訊ねると、首を横に振った。



「たぶん、僕が呼んでるのを聞いてたんだよ。留さん、なんて呼ぶの僕だけでしょ?」




ならば、きちんと教えればおじちゃんなんて言われないのでは…………?そう思った文次郎だったが……。




「ちなみに、文次郎の事をおじちゃんだと教えたのは私だけどな!!」



「こぉぉぉぉへぇぇぇぇいぃぃぃぃたぁぁぁぁっ、貴様ぁああーーーーーーっ!!」



怒り狂う文次郎を余所に仙蔵は気になっていたことを訊ねる。



「なぜ、長次はお前たちにはなつくんだ…………っ!?」



明らかに、自分の時との差に納得がいかない。




「うーん、上手くは言えないけど、やっぱり記憶の奥底で覚えてるんだと思う。僕はしょっちゅう長次の怪我を診てたし、わりと一緒にいる時間が多かったから。」



「私と文次郎は毎日一緒に鍛練してたしな!」



いつの間にか追いかけっこを終えた小平太と文次郎が話に加わる。



「まぁ、仙蔵と留三郎は俺らに比べたらあんまり接点なさそうだしな。」



「誘っても来ない仙蔵の自業自得ってことで。」





「そ、そんな…………。」




ガクリと仙蔵が項垂れる。何かブツブツ言っているが放っておこう。








「あ、そうだ。いさっくん、例の飴のこと何か分かった?」




いや、と伊作は首を振った。



新野先生の力を借りてもわからなかった。もう、お手上げなのだ。




「そっか。あのさ、いさっくん。私、いっこだけ気になってることがあって…………。」



小平太の真剣な声に首をかしげ先を促した。





「あの日…………「こへたん、おうましゃんやって〜!」合点承知だ!いけいけどんどーーーーーーん!!」




「えっ、ちょ、小平太ぁああーーーーーー!!!?」



伊作の叫びも空しく、小平太は物凄い早さで長次を背負い走り去った。遠くで、きゃっきゃ笑う長次の声が聞こえる。





「もー、仕方ないなぁ。ほら、仙蔵。いつまでもいじけてないで二人を追うよ!」



部屋を出ていく伊作と文次郎の後を仙蔵もしょぼしょぼと追いかけた。




その後、一緒に遊んでるうちに長次に名前を覚えてもらった仙蔵。のちに思い出し笑いする仙蔵の姿が目撃される事となった。
















一方そのころ…………





「俺、途中から完全に空気だったよな………………。」



天井に突き刺さったまま取り残された留三郎のすすり泣く声が部屋に響いていた。








〜END〜



わけわかんない出来になった(^q^)




次回、小平太が語る「気になってること」で事態は思わぬ方向へ!お楽しみに〜d=(^o^)=b






 
 

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