KIRI-REQU

□君が好き
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「……………………アイツと、何してたんだ?」


「?」


予算案に目を通していた長次が、キョトンと俺を見つめる。ああ、そんな無防備だから、あんなアヒル野郎に迫られるんだよ。


俺が来なきゃ、お前ら何しようとしてたんだ。唇が合わさる寸前で声をかけたのは偶然なんかじゃない。姿の見えない長次を探して、留三郎と二人でいるところを見つけてしまい、しばらく様子を見ていた。留三郎が長次に何かしようものなら、絶対阻止してやるつもりで。



俺は、アヒルと違って単純じゃねぇ。長次に惚れたその瞬間から、驚くほど長次の周りに目がいった。



だから、すぐに気付いた。留三郎も長次の事が好きなんだと。



「…………ああ……。留三郎に、本を選んであげただけだが?」


やっと俺の質問に合点がいき、ポツリと答える長次に俺はため息をつく。



接吻されそうになってたってのに……何でそんなに暢気なんだよ……。



長次は昔からそうだ。優しくて、周りには目が届くというのに、自分の事となると無頓着で……。だから、余計に自分が守ってあげなくては、と思ってしまうのかもしれない。長次は決して弱くない。一緒に鍛練してる俺が認めるくらい強い。だけど……。



「あんまり、俺以外の奴に触らせんじゃねぇよ。」


「っもんじ……!?」


図書室から出て、誰も通らない廊下に長次の手を引いて連れ込む。この手も、アイツが握りしめていたのかと思うと嫉妬で苦しくなる。


壁に長次を押しやって抱き締めた。ありえないくらい鼓動が速い。伝わるものなら、長次に気づいてほしい。こんなにも、お前が好きなんだと……。


「ど、どうしたんだ文次郎……?具合でも、悪いのか……?」


どうして自分が抱き締められているのか分からない長次に、俺はガクッと項垂れた。しかし、いたわるように背中に回された腕に高揚感が増す。






「大丈夫だ、何ともない…………。今夜、鍛練行くだろ?」



こくりと頷く長次に微笑み、解放してやる。


そうだ、俺は留三郎よりも長次といる時間が多い。絶対に奴より先に落としてやる。






























「………………何で、お前がここにいるんだ留三郎っ!!」




長次を独占できる(と、言っても小平太もいるのだが……)貴重な時間だというのに、何故か今日は留三郎がいた。



「私が誘ったんだ!鍛練仲間は多い方が良いだろ?手合わせするにもちょうど良い!」


ニカッと満面の笑みを浮かべる小平太を小突いてやりたくなる。人の気も知らないで!


「長次……、その、俺と手合わせしようぜ!」


留三郎が長次の手を取り、拓けた所を指差す。…………冗談じゃない。二人きりになんてさせるかっ!



「長次は俺と鍛練するんだよ!てめぇはその辺のタヌキの相手でもしてろ!」


「なっ、何だとぉ!?」



得意武器を取り出して対峙する文次郎と留三郎に、長次はポカンとなり小平太は交ざりたそうにソワソワしている。


「……………………。」


「ズルいぞお前たち!私も交ぜろ!!」


いけいけどんどーんと突っ込む寸前の小平太の首根っこを掴み、長次が此方を見つめている。




ああ。お前には俺たちの喧嘩の原因なんて、予想もつかないんだろうな。いつもの喧嘩の延長とでしか長次に映ってないんだと思うと、なんだか無性に腹が立ってきた。



「どいつもこいつも邪魔しやがって……!長次に気安く触るな!!コイツは俺のなんだよ!」


「…………っ!」


指を差された長次が目を見開く。
それを聞いた留三郎も負けじと言い放った。


「バカ言うな!長次は誰にも渡さねぇ!!」



「…………っ、お、お前たち、何を……。」




ただならぬ雰囲気に、さすがの長次も焦り始める。


言ったら、後には引けなくなるとか、もうそんなくだらない考えは捨てた。


しっかりと長次の目を見つめ、逃がしてなんてやるものかという勢いで叫ぶ。













「「好きだ!長次!!」」














 
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