KIRI-REQU

□my sweet honey
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小平太か留さんがいない日。


その日くらいしか、僕と長次が二人きりになれる機会はない。小平太がいない日は長次の部屋で、留さんがいない日は僕の部屋で。それでも、すぐに邪魔が入るんだけどね。小平太も留さんも長次が好きだから、必ずどちらかが邪魔しにくる。長次は僕の恋人なんだから早く諦めたら良いのに。



まぁ、愚痴はこのへんにしておこうか。だって、今日は小平太も留さんもいない。つまり、長次との二人きりを邪魔する者がいない日なんだ!



そして今は、長次を僕の部屋に呼んで一緒に書物を読んでいる。長次は南蛮の書物、僕は医学に関しての書物を。


もくもくと本を読んでいる長次をチラリと見やる。せっかく邪魔者がいないのに…………。もっと恋人らしくベタベタしたいと思ってるのは僕だけなのかな?



しばらく長次を眺めたあと、ふと正座された脚に目がいった。



「…………………………。」




長次に膝枕してもらって、思いきり甘えちゃおうかな。でも、いきなり頭をおいたら長次驚いちゃうよね、てかむしろ読書の邪魔するな!って怒られるかも…………。




そんなことを悶々と考えていたその時。




ボスっ!



「え、あ、長次!?」



突然膝に重みを感じて視線を向けると、僕の膝に長次の頭が乗っていた。



「ずるい長次!僕だって長次に膝枕してもらおうと思ってたのに!」



頬を膨らませて長次の顔を覗きこむと、いたずらっ子みたいにニヤリと笑って「…………早い者勝ち。」と返された。



なんだかそんな長次が無性に可愛くて、甘やかしたくなってくる。「寝転がって本を読むなんて行儀悪いんだから!」と小言を言いつつ長次の顔を見つめた。長次は僕の視線に気づくことなく読書を再開する。




…………長次ってば、意外と睫毛長いんだなぁ。とか思いながら、薄く開かれた唇に目を止めた。






(あ………………ヤバイ………………。)








その瞬間、急にムラムラしてきて思わず唾を飲み込んだ。そういえば、最近は邪魔が入ってばっかりで、そっちの方はご無沙汰だったな…………。



長次と身体を繋げたことはある。最後にしたのはいつだったか……。リアルに長次の感触を思い出してしまい、下半身に熱が集まる。



(ああ、どうしよう……。た、勃っちゃった…………。)




長次の頭の隣で盛り上がる膨らみに、静まれ〜!と念じても無駄だった。長次に気づかれたら、絶対引かれる!それだけは、嫌だ。こんなことで距離なんておかれたら……僕は死ぬ!よし、厠に行こう。長次に声かけて、こっちを見る前に何とかバレないように……。よし!いくぞ!



「ちょ、長次、僕、厠に行き……ひゃんっ!!」



「っ!?」



なんてことだろう。立ち上がろうと少し腰を上げた僕の股間と、本を捲ろうとして上げた長次の手が当たってしまった……!あぁーっ!こんなときでもブレない自分の不運が呪わしい!てか、長次固まっちゃったよ!絶対引かれた……!盛ってるとか思われてたらどうしよう…………!




「………………………………。」


「………………………………。」



「………………あ、の。…………ごめん、引いたよね?………………厠に、行ってくるから……、頭を退けてくれる?」



ああ、ヤバイ。みじめすぎて目から塩水が…………。じんわりと滲むそれを拭おうと腕を上げた、その時。




スッ…………と少し冷えた長次の指先が、かわりに拭ってくれた。




「ちょ、長次?」



「……………………のか?」




「え、ごめん、何て?」



呟かれた言葉が聞こえなくて問い返すと、長次が少し躊躇ったように繰り返した。






「…………伊作は、私とするのは、嫌なのか…………?」




「へ!?」




す、するって…………。つまり、長次を抱くのがってこと? いやいや、ちょっと待ってよ。そんなの……











「したいに決まってるじゃないか!」



いきなり叫んだ僕に、長次が驚いたように肩を跳ねさせた。


「最後にヤってから、どれくらい経ってると思ってるの!毎晩毎晩自分で慰める惨めさといったら……!ホントは毎日だって長次を抱きた……っ!」




そこまで捲し立てて、ハッと我に返った。いやいやいや、今のはマズイよ!今のはさすがに引かれたよ!



しかし頭を抱える僕の耳に届いたのは、長次の安堵したような声だった。




「良かった…………。」



「え……?」




「……………………最近、私に触れないから…………。もしかしたら、私の、その…………あ、喘ぐ姿が、気持ち悪かったのでは、と…………。」



「そ、そんなわけないよ!!すっっっっごく可愛かったよ!ホントは一回じゃ足りないくらい、興奮したよ!!」



僕の力説に、長次の頬がカァーッと赤く染まる。反応に困って、ウロウロとさ迷っていた視線が、ふと僕の顔を捉えた。



「…………ならば私は、伊作の恋人だと…………、そう思っていてもいいんだろう?」



「あ、当たり前じゃないか!僕は恋人でもない人を抱くほどだらしなくないよ!」





「そう、だな。…………すまない、勝手に、不安になっていた……。もしかしたら、恋人だと思っているのは私だけかもしれないって…………。」




長次を不安にさせていたなんて…………。それなら、邪魔なんて恐れずに長次に触れればよかった……。


自分の不甲斐なさに項垂れる僕の頬を長次の掌がそっと撫でた。






「なら…………厠に行かなくても、いいだろう…………?」




「ふえ?」



長次の突然の呟きの意味を捉え損ね、首を傾げる。





「…………厠でヌかなくとも………………私のナカに出せばいい。」


「そ、れって…………!」



「…………私を不安にさせた罰だ。今までの分、纏めて寄越せ。」



それって、つまり、僕が満足するまで抱かせてくれるってこと…………?長次…………っ、今のはキたよ……!



「…………あとで、やめてくれなんて言っても、聞かないんだからね!」






コクリと頷く長次を起き上がらせ、僕は自分の布団へと長次の腕を引いて向かう。着物を脱ぐのももどかしくて、待ちきれないとばかりに二人して布団の上に雪崩れ込んだ。













 
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