KIRI-REQU

□風邪引き長次の災難
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後ろから両肩を掴まれ、恐る恐る振り返る。


「どこに行くんだ長次?」


「ダメじゃないか、ちゃんと寝てなきゃ。」



いやにニッコリと笑う2人が恐ろしい。



「っ!!?」


不意にぐいっと腕を引かれ、布団の上に倒れこんだ。


上から与四郎が覆いかぶさり逃げられない。


すると、長次のそばにしゃがみ込んだ雑渡が


「ねぇ、長次くん。激しいのと優しいの、どっちが好きなの?」



まるで、セクシーなのキュートなのどっちが好きなの?なノリで聞かれた。


「どっちも……。」
いや。と続けようと口を開こうとしたら、


「どっちもなんて欲張りだなぁ長次くん……。」と雑渡が言った。



最後まで聞けよ、人の話は。と若干の苛立ちを覚える。



雑渡の方に気が向いていた長次は気づけなかった。

与四郎の瞳に不穏な色が宿ったのを。






「………長次の髪下ろしてるところ初めて見るけど、結構可愛いのな。」


「………はぁ?」


「髪結ってるのも、うなじが艶っぽいから好きだけど。……こっちもなかなか……そそられる…。」


髪を一房掬い上げ口づけを落とす与四郎に魅入っていた長次だったが次の瞬間、


「っ!!?痛っぅ!!」


空いた方の指で胸の突起を、ぎゅうっと力いっぱい抓られた。


あまりの痛さに涙目になる長次を満足そうに見下ろす与四郎は、完全にドSモードに入っていた。


「………相変わらず良い表情するなぁ、長次。」



「ぁ、悪趣味………っ。」


悪態を突きつつも、胸がジンジンして喘いでしまう自分が恨めしい。



「ずるいねぇ。私をのけ者に2人で楽しむなんて………。」



雑渡がニヤリと(包帯に隠れてて見えないけど)笑った。


しばらく傍観を決め込んだらしく、横座りして長次の顔を眺めている。



(視姦プレイかこの野郎!!)と、睨みつけるが、痛みと熱で潤んだ目では迫力など出るはずもなく、ただ雑渡を悦ばせただけだった。



「ぅ、あ……ゃだ、って……言ってるの……にぃ。」



与四郎の手が着物の裾から入り込み太股を撫であげた。


(も……嫌………助け、て。)

熱と絶望で朦朧とする意識の中、助けを求めた。すると、




「大丈夫ですか!?中在家先輩!!!」




ガターーーーーン!!と音を立てて誰かが飛び込んで来た。



先に気づいたのは雑渡だった。この子は見覚えがある。この保健室で度々見かける3年生の保健委員。確か名前が、


「………………………数馬?」

与四郎の下にいた長次が、その少年の名を呼んだ。


「う……ぐすっ………た、助けて……数馬ぁ………。」


涙をポロポロ零して数馬に両腕を差し出す長次に、雑渡と与四郎は驚いた。


何だ!?この可愛い仕種は!!


「長次さん!………お二人とも、他人の恋人に手を出すなんて最低ですよ!!!」



「………は?恋人?……ぇ…誰と誰が…………?」


「誰って……僕と長次さんが、ですけど?」


「「はあぁあああああっ!!?」」




驚いて固まる2人をそのままに、数馬は軽々と自分より大きい長次を抱き上げた。



「はぁ……。まったく、だからいつも無防備すぎるって言ってるのに……。あんまり手を出させないで下さいね?心配で授業も頭に入りませんよ。」



「………………すまない…。」


「ここは危険みたいですからね。僕の部屋に行きましょうか。まだ熱があるみたいだから、ゆっくり休んでくださいね。」


ニコリと笑う数馬に、長次がポッと頬を染めた。疲れている時はいつもこの笑顔に癒される。



しかし、雑渡と与四郎は気づいてしまった。数馬の笑みに黒いモノが混じっているのを。さすが保健委員と言うべきか。てか、それに気づかない長次が逆にすごい。




あぁ、これは確実に部屋で何かされるな。しかも焚きつけたのは、おそらく自分達だ。



部屋から出ていく長次と数馬を呆然と見送った2人は考えていた。


おそらくこの学園には、彼らが恋仲だと知っている者はいないのだろう。同じ保健委員の伊作にさえ気づかせないとは、三反田数馬…かなりの強敵だ、と。


「………ここは一時休戦して協力すべきかな?」


「だなぁ。何か横取りされた気分だ………。」





長次のことを諦める気のない2人の戦いは、今始まったばかりだ。



〜END〜


あれれ?雑長、与長のはずが数長オチに……………。

待たせた上に、こんな出来で申し訳ないです(>_<)



雑長、与長どちらもお気に入りカプなので、これから話を増やしていくと思います。


ありがとう
ございました(*^o^*)
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