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□寒いけど、熱い
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それは冬の寒い日のことだった。

凍える両手にはぁっ、と息を吹きかけて空を見上げれば、暗い空から白い雪がふわふわと舞い降りてくるのがわかる。



「……つめてぇな」



こんなに雪が積もったのは初めて見た。
俺は、積もっている雪を両手いっぱいにかき集めて雪玉をつくり、誰に向けているわけでもないが向こうへ投げ飛ばした。
その雪玉は、どこか遠くのほうでぼすん、と音を立てて崩壊した。



「……風邪、ひくぞ」



気が付けばいつの間にやら用事を済ませてきた鬼道ちゃんが後ろに立っていた。



「んぁ?なんだ鬼道ちゃん居たの?」
「……居たの?って…」



鬼道ちゃんのコートからカイロを奪う俺に鬼道ちゃんは小さくため息をもらし、そして優しく微笑んだ。



「…待たせたな…寒かったか?」
「あぁ、寒かった」



かじかんで動かなくなった手を鬼道ちゃんに見せながらお前のせいだ、と言えば、そうだな、俺のせいだ、と笑った。

その笑顔にがらにもなくどきりとする。
いつからか鬼道ちゃんのペースに乗せられることが多くなった。
付き合ってすぐの時はほぼ俺ペースだったのに、今は鬼道ちゃんペースばかりだ。
だから、俺はいちいち鬼道ちゃんの行動にどきどきされっぱなしで心中穏やかじゃない。



「(…ほんと調子狂う…)」



そんなことを思って下を向いていると鬼道ちゃんが顔を覗き込んできた。



「どうかしたのか?不動」
「っ///!?」



なんで覗き込んでくるんだよ、とか別にいいだろ、とか言う前にまず…



「(かっ…顔が、近い…っ///)」



顔に熱が集中する。
一気に顔が熱くなる。
そんな俺の見た鬼道ちゃんは、くすっと笑った。



「…あぁ不動、お前可愛すぎだ」
「っはぁ///!?おまっ…な、何言って…」



俺の言葉はそこで途切れた。
理由を理解するまでに時間はかからなかった。

鬼道ちゃんが、俺にキスしてきた。




「…んっ…ふぅ…んぁ…」


状況は理解できても、行動ができない。
俺はそのまま鬼道ちゃんにされるがままだった。
しばらくして鬼道ちゃんのキスから解放された。
俺はその隙に鬼道ちゃんの腹に蹴りを入れた。



「こんなとこで盛ってんじゃねぇよ!この万年発情期ヤローがっ///!」
「ぐはっ…わ、悪かった…」



そこで悶えてる鬼道ちゃんをほったらかして家へ向かう。



「(なんだよ…鬼道ちゃんなんて…鬼道ちゃんなんて…!)」




鬼道ちゃんから奪ったカイロの熱はもうおさまってしまったけれど、顔の熱はいつまでたってもおさまらなった。










〜次ページはあとがきです〜
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