デュラララ−外伝−

□狂い始めた記憶
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「ん・・・・」
ぱちり。と大きな瞳が開いた。
すると、少年は辺りを見回すようにキョロキョロし出した。
そして出てきた言葉は
「・・・・ここ・・・・どこ・・・・?」
それだけだった。

森の中。少年、紀田正臣は眠っていた−正確に言えば気を失っていた−。
現在はおそらく朝だろう。
(ここは・・・森?・・・でも、どうして?)
正臣は必死に考えた。
(っていうか、帰らなきゃ!・・・・って、・・・どこに・・・・?)
正臣は自分の異変に気づく。
「・・・・あれ?」
なにこれ。と正臣は呟いた。
「・・・・忘れた・・・・?」
ガサッ。急に物音がして振り向く正臣。
すると、そこには黒尽くめの人が立っていた。
『・・・・?大丈夫か?』
「え?俺ですか・・・・?」
黒尽くめの人はヘンなモニターで字を見せてくる。
(喋れないのかな・・・?)
そんなことを思う正臣に黒尽くめはまたもモニターを見せてきた。
『当たり前だ。お前しかいないだろ?こんなところで何してるんだ?』
「え・・・・」
正臣は戸惑った。
言われてみれば、何をしていたかわからなかった。
「え、と・・・わ・・・わかりません」
『・・・・・は?』
「あ・・・すみません!意味不明ですよね!?・・・・でも、俺にも意味不明なんです。起きたら何もわかんなくって・・・・」
正臣は混乱しながらも今の状況を必死に説明した。
『まさか・・・記憶喪失なのか?』
「へ・・・・・?」
黒尽くめの言葉に正臣の時間は一瞬止まる。
でも、確かにそれは考えられると正臣は思った。
「・・・そうなんすかね」
正臣は笑って言った。
『お前・・・怖くないのか?』
「怖いって言っても・・・・なんにも覚えてないし」
『・・・・お前は強いんだな。私だったら、そうは思えなかった・・・・』
「え?」
『私はセルティ・ストゥルルソン。お前は?』
「え・・・・あ、俺は・・・き・・紀田!そう!紀田正臣です!!」
『そうか。よろしく正臣』
「はい!」
正臣は友達が初めて出来たような感覚に陥った。
『なぁ、私と記憶を探す旅をしないか?』
セルティの急な提案に正臣は驚いた。
「え?一緒に行っていいんですか!?」
『勿論。じゃあ、近くの村の宿にでも言って詳しく話そう。それに、お前はもう少し休んだほうがいいしな』
「・・・・はいっ!!」
正臣は満面の笑みで答えた。




「帝人君、正臣君は?」
「まだ見つかってません!」
「・・・・そう」
「・・・・・失礼しました」
(臨也さん。正臣は僕が必ず見つけ出します)



平和島家の大きな庭で小さな女子会が行われていた。
「ねぇ、聞いた?正臣君、いなくなっちゃったんだってね」
見るからに噂好きそうな張間美香が言った。
「ダメだよ、美香。深刻な話なんだからね」
そんな美香に忠告するように三ヶ島沙樹が声をあげた。
「沙樹さんの言う通りです。」
それに便乗し、せっせと掃除をしていた大人しそうな少女、園原杏里が口を開いた。
「杏里まで〜!」
頬を膨らませながら美香が言った。
すると、それまでつまらなそうにしていた聖辺ルリが、ぱぁっと表情を明るくさせ叫んだ。
「あっ!!幽!」
そこには幽と兄だが使用人の一人の静雄がいた。
「あら、ルリ。皆さんも」
「てめぇ・・・幽様に馴れ馴れしくすんなっつてんだろ!!」
静雄が怒鳴るとルリは
「静雄、うるさい・・・」
と、嫌そうな顔をした。
「あ!?」
「お兄様!!ルリをいじめないで下さい」
「あ・・・・すみません」
幽に言われるとすぐに身を引く静雄。
そんなやり取りを見た後、美香は話しを戻すように呟いた。
「それにしても。正臣君、大丈夫かな?」
それに答えるように幽は優しい瞳で言った。
「ああ・・・正臣なら、平気ですよ・・・きっと」
「そうですよね!?さっすが幽様〜♪」
と、美香は訳のわからないことを言う。
「ふふ・・・止めて下さい美香」
「あははっ♪」

-----ああ、気づいた時にはもう・・・歯車は狂っていたんだ・・・-----

「お兄様?どうかしました・・・?」
「・・・いえ、なんでもありません」

-----わりぃ・・・・幽・・・・------




『おはよう。昨日はよく寝れたか?』
「はい。ありがとうございます」
『今日は詳しく話そう。もっと正臣とも仲良くなりたいしな』
「わっ・・・・う・・・嬉しいです!!」
『はははっ』
「あはははっ」
(いつまでこうしていられるかな・・・・?また何かあるかもしれないのに・・・・。本当は怖くて眠れなかった・・・・)

-----運命の歯車を狂わせたのは誰だろう・・・。そんなことを考えても何も覚えてないのに・・・・-----
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