デュラララ−外伝−

□悲劇のハジマリ
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−気がつけば俺は、何者でもなかった。−


折原家の屋敷の庭で少年、紀田正臣は一人空を眺めていた。
「正臣〜!」
正臣は急に名前を呼ばれ、とっさに振り向いた。
「ん?帝人?どした?」
帝人と呼ばれたその少年は慌てたように口を開いた。
「ないんだ!ご主人様の・・・指輪が!!」
そう言って少年、竜ヶ峰帝人は正臣の腕を掴んだ。
「落ち着けって!また嘘じゃないのか?」
「ど・・・どうしよ!怒られる!」
「失くしたって言ってもあの人の責任だろ?ほっとけよ」
正臣がそう言うと、さっきまで慌てていた帝人は青ざめていた。
「ま・・・正臣、う・・・後ろ」
と、指をさしながら言った。
「ん・・・・って、臨也さん・・・いたんすか」
流石に正臣も言いすぎたと思っていたらしく、臨也の存在に気づいたときは驚いていた。
「君はホントに酷いなぁ・・・ま、そんなトコロも好きだけどね♪でも正臣君にはなんでもわかっちゃうんだね。勿論、指輪を失くしたってのは嘘だよ?」
−やっぱり・・・。
子供のように笑う青年、折原臨也はこの屋敷の当主である。
正臣と帝人はこの当主に仕えているのである。
「はぁ・・・良かったぁ」
と、帝人は心からその言葉を口にする。
「はは!帝人もビクビクしすぎだって」
正臣が笑って言うと、臨也は正臣に便乗するように言った。
「帝人君って本当、弱っちいよね〜♪」
すると正臣は顔から笑みを消し・・・
「・・・臨也さん・・・?」
「あ!正臣君、怒ってる?やだやだ〜♪あ、そうだ」
そこまで言うと、臨也は真剣な顔になった。
「この指輪、片方は正臣君が持っててよ。つけてていいからね♪それじゃ、俺は用事あるから、またね正臣君」
臨也は正臣に指輪を渡すと、歩いて行ってしまった。
「あ・・・臨也さっ・・・て、行っちゃった」
と、正臣は諦め仕事に戻ろうとしていた。
すると、帝人が急に呟いた。
「ごめんね・・・正臣」
「え?なんだよ、急に」
正臣はなんの話か全くわからず、首を傾げた。
「僕、迷惑だよね・・・」
「なわけないだろっ!?」
「そう?・・・なら、いいんだけど・・・」
そう言いながら帝人は去って行った。
−一体どうしたんだよ・・・帝人
正臣が考えていると、後ろから小さな声がした。
「あのぅ・・・」
「!・・・幽様・・」
幽と呼ばれた女性は、艶のある黒髪に赤い着物を身に纏っていた。
「あぁ、急にすみません。臨也さんはどこにいるか存じませんか?正臣」
幽は折原家の隣にある、平和島家の当主である。
「臨也さんなら、さっき仕事って言ってどっか行きましたよ?」
「そうですか・・・。ありがとうございます正臣。では・・・さようなら」
「・・・!」
正臣は幽の言葉に、声色に一瞬寒気がした。
−なんだ・・・今の笑みは・・・

−にしても平和だなぁ・・・
正臣には家族がいなく、近所で見かけて羨ましく思ったこともあった。
だが、今の正臣には周りに帝人や臨也がいるからそう思うことも少なくなっていた。
つまり、幸せだったのだ。

−いつまで続くだろう・・・なんて考えたこともなかった。
−歯車はもうとっくに狂っていたのに・・・


門の方で突然大きな音がした。
「!!なんだ!?」
正臣はとっさにいつも持っている護身用のナイフを取り出そうとしたが、いつもある場所にナイフがない。
−!?さっきまであったのに!
ふと正臣は1つの可能性に気づいた。
−盗られた!?誰に?帝人?臨也さん?いや・・・ちがう・・・幽様・・・?
そう考えているうちに、侵入者が敷地内に侵入したらしい。
すると、正臣の前に姿を現した。
侵入者は手にしていたナイフで正臣に斬りかかってきた。
「!あぶなっ!」
正臣は瞬時に避けた。
『お前は禁忌の悪魔琥(ダークネスメイデン)・・・断罪を受けし者・・・』
「・・・!?」
正臣は侵入者が何を言っているのかわからず、とっさに走っていた。

正臣はやみくもに逃げて、森の中まで来ていた。
「ここ・・・・どこ・・・?」
正臣はさっき避けきれず少し刺されていたらしい。
正臣は既に意識が朦朧としていた。
−もう・・・ダメ・・・
そして、ついに正臣はその場に崩れ倒れてしまった。

「ふぅ・・・やっと見つけましたよ?臨也さん」
「・・・幽っ!」
「今日は私の両親の命日ですから・・・。」
「・・・そうだったね」
「・・・それと正臣にお別れの言葉を伝えて来ました。」
「・・・え?」
「いえ、なんでもありません。」
「・・・ん?騒がしいな・・・」
「ご主人様!侵入者です!!・・・・それと正臣がいません!!」
「!?・・・・わかった。すぐ行く!・・・悪い、幽。それじゃあ」

「歯車は狂った・・・・ふふ・・・あはは!・・・待っていてね。母様・・・父様・・・必ず私が・・・!」
「・・・・幽様、そろそろお時間です。」
「・・・お兄様・・・今、行きますわ」
「なら、結構です」


−月は満ちた。歯車は狂い、壮大な物語を繰り広げる。
そしていずれ再び月が満ちる時はくる−

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