零式

□秘密恋愛-secret love-
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僕はマキナが好きだ。
・・・でも、この想いは絶対に伝えちゃいけない。
いや、知られちゃいけない。

数日前、偶然マザーが話しているのを聞いてしまってそれ以来。
僕はマキナのお兄さんを殺してしまった罪悪感でマキナを避けている。
・・・そうでもないと、自分の気持ちが爆発してしまいそうだから。
お兄さんを殺したくせにマキナと幸せになんてなれるわけがない。
だから・・・自分の気持ちを押し殺して生きている。
マキナにもいつか謝らなくちゃな・・・。

「あ、エース・・・」
「・・・!マキナ」
「あ、今日さ・・・」
「ごめん、ちょっと用事あるから先行くっ!」
「え、エース!?・・・って、言っちゃった」

こうやって僕はいつもマキナを避けている。
・・・バレてないだろうか?

「この問題、答えられるやつは・・・」
あぁ・・・眠い・・・。少し・・・寝ようかな・・・?



「・・・ス・・・エース!!」
「・・・っ!」
・・・・マキナ?
「ははっ・・・やっと起きた。寝すぎだぞ?」
「あぁ、悪い。」
「・・・それより、エース。今、二人きりなんだし、たまには・・・」
そう言ってマキナは僕を抱き締めた。
「へっ!?」
「・・・ははっ、エースは可愛いなぁ」
まずい。このままじゃ、自分の想いが爆発してしまう・・・。早くこの場からっ・・・
「・・・ご、ごめんっ!」
そう言い、マキナを突き飛ばし、僕は走り去った。
廊下に出ると、マザーに出会った。
「あら、エース。そんなに慌ててどうしたの?」
「あ・・・いや、何でもないよ。」
「そう?・・・あぁ、エース。最近どう?気持ちの整理はついたの?」
マザーは急に話題を変えた。
「・・・マザー。僕はマキナにこの想いを伝えてもいいのかな・・・?」
「・・・なに言ってるの?」
「・・・え」
・・・マザー?
「貴方、本当に伝えようと思っているの?
  貴方が許されるわけないでしょう?
  貴方は犯罪者なのよ?しかも、マキナのお兄さんを殺した。
  解るわね?エース」
・・・。やっぱり僕は許されてはいけないんだ・・・。




「・・・ス・・・エース〜」
「・・・ん」
ジャック・・・とデュース?
「あ、おはようございます。」
「おはよ〜」
「あ、あぁ・・・おはよう」
夢・・・だったのか?
だとしても、僕は許されてはいけない。
「次、移動ですよ?」
「あぁ・・・今行く。」

「・・・エース!」
「マキナ!?」
今、教室には僕とマキナだけ。
それって・・・まずい・・・。
「次、移動か。一緒に行かないか?」
「ひ、一人で行く・・・!」
と、走り出そうとしたのだが・・・マキナに手を掴まれた。
もう、関わらないで・・・。
「さ・・・触るなっ!!」
「・・・エース?」
「・・・気安く僕に触るな。・・・悪いけど、もう関わらないでくれるか?」
・・・本当はもう泣きたいくらいなのに。
「・・・それじゃ」
「エース!!」
「呼ぶなっ!・・・もう、呼ばないで」
「エース・・・」
泣くな・・・泣くなよ・・・
「僕は人殺しなんだぞっ!?なんで話し掛けるんだよっ・・・!」
「それは・・・」
「お前の兄さんを殺したのに、どうして恨まない!?」
「そんなの・・・解らないだろ・・・」
「マザーだって言っていた!!」
「そんなの真実かわからないっ!人が言ったことなんて真実かわからないじゃないか・・・」
「・・・真実じゃなくても・・・どうして恨まない?兄さんの仇をうてばいいじゃないか!僕を殺せばいい。」
「エー・・・」
「お前が殺さないなら僕が自分で死ぬ。」
「っ!バカか!?お前!!」
「えっ・・・」
そう言ってマキナは僕を強く抱きしめた。
持っていたカードも落ちるほど、強く・・・強く・・・
「兄さんだって、復讐なんて望んでない・・・。俺だって、兄さんのことを覚えていないけどきっとそんな人じゃない。きっと俺が人殺しになるほうが悲しむさ。」
あ・・・。そうだ。僕は何を言っているんだ・・・。マキナのお兄さんはそんな人な訳ないだろう・・・
「・・・ごめん・・・ごめんな・・・マキナ」
「・・・わかったら泣き止めって。」
マキナはそう言ったが僕の涙は止まりそうになかった。

「・・・もう泣き止んだか?」
「・・・悪かったな・・・」
「ははっ、別にいいって。そうだ!俺、エースに隠してたことがあるんだ。」
そう言った後、マキナは少し真剣な顔をした。
「俺、エースのこと好きなんだ」
・・・え・・・?
「ひ・・・ひいた?ずっと恐くて言えなかったんだ。でも、やっと言えて・・・良かった・・・」
「・・・本当に?」
「あ・・・ああ。嘘つく必要なんてないだろ?」
「・・・」
「なぁ、エースの答えが聞きたい。」
「え・・・」
「思いっきりふってくれて構わない!」
・・・なんだ・・・バカはお前のほうだ・・・。
こんな僕を許してくれて、好きだと言ってくれて・・・
−ありがとう。マキナ・・・
「・・・っ」
僕はマキナにキスをした。
バカなマキナは気付くかな?
「え・・・」
「マキナ、僕も−・・・」

−好き。
たった二文字の言葉。でもそれで幸せになっている僕はおかしいのかな?
「次は『恋』の勉強もしなきゃな」
「え?突然何言い出すんだよエース。まぁ、確かに頼りないけど、俺」
「別にそういう意味じゃない。二人で・・・・勉強していこう・・・?」
「そ・・・そうだな・・・////」

秘密の恋は今日まで。
−好き。好きだよ、マキナ。

                                 〜END〜
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