1章「そして彼女は目を覚ます」
□1話
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ルバーブ峠で「魔物退治」の依頼がちょうど終わった時である。
カノンノがたまたま空を見上げると、ものすごい勢いで何かが頭上を通過していった。
「………光?」
大きな光の玉らしきものが、ルバーブ峠の頂上付近に浮かんでいる。
「まだ、船の迎えが来るまでに時間があるし…行ってみよう」
そもそもカノンノが魔物退治をしていたのは、このルバーブ峠の道をペカン村の村人達が安全に使えるようにするためである。
魔物はある程度退治したが、あの光の正体が安全かどうかも確認しておいたほうがいいだろう。
(それに、ちょっと興味もあるし)
カノンノは、依頼を受けた者としての責任感と未知のものへの好奇心から、ルバーブ峠の坂を登り始めた。
「……なんだろう、この光…」
元々そう離れてない所にいたため、頂上にはすぐ着いた。
光の玉はカノンノの頭より数メートル高い位置に浮かんでいた。思っていたよりも眩しくなく、むしろやわらかく暖かな光を放っている。
その光の中心に、何かがいた。
「人……間…?」
カノンノがそうつぶやくと、光はまるでその声に反応したかのように、ゆっくりと地面にむかって下降をはじめた。
カノンノは、自分でも気がつかないうちに光にむかって手を伸ばし、
その腕で光を受け止めた。